case.35
鉄板焼き どんとこ
店主
美野由人 さん
人の想いが、味になる。
素材に寄り添い、生産者の想いとまっすぐに向き合う料理を。
三川町と八丁堀に鉄板料理のお店を構える「どんとこ」。自然豊かな環境で育った美熊野牛をはじめ、季節ごとに厳選した野菜など、食材を心から愛する生産者の方々から仕入れた確かな素材を使用し、旬の恵みを丁寧に調理しています。
おもてなしの心にあふれた空間で、食への感謝と喜びをゆっくりと味わっていただけます。外国人観光客にも人気が高く、地元の方々に長く愛され続ける理由とは?…ジャックが聞かせていただきます。
飲食店をはじめられたいきさつと開業までの足跡をお聞かせください。
美野さん
広島市安芸区船越の出身で、1979年生まれの46歳です。地元の高校を卒業後は、スノーボードのインストラクターとして活動していました。恐羅漢やドルフィンバレーなどでインストラクターとしてシーズン中は指導に専念していましたが、オフシーズンには焼肉バイキングの飲食店で働いていました。
22歳のとき、ニュージーランドでスノーボードをする機会があり、同い年のプロ選手の滑りを見て、その実力差に圧倒されました。「この世界では通用しない」と感じ、スノーボードで生計を立てる道は諦めました。
当時は飲食業に向いていないと思っていましたが、アルバイト先でお世話になっていたこともあり、「中途半端なまま終わらせたくない」と考え、もともと接客が好きだったことから新たにお好み焼き店で働きはじめました。
その後、そのお店を退職して、広島でも勢いのある有名なお好み焼き店に再就職。ここで本格的な修行を積みましたが、26歳の頃、一度飲食業を離れ、老人介護の仕事に就きました。
というのも、小学5年から二十歳まで、自分の祖母の介護を母がしており、その際に訪問していたヘルパーさんの姿に強く感銘を受け、「自分もいつか人の支えになる仕事をしたい」と思っていたからです。
穏やかにインタビューに答えてくださる美野さん…とても楽しく開業からこれからのお話しをしてくださりました
介護のお仕事はどうでしたか?
美野さん
飲食である程度の技術を身につけた後、思い切って介護の世界に飛び込み、3年間経験しました。
介護では、一人ひとりの思いに寄り添い、「どんな最期を迎えたいのか」を考えながら関わりたいと思っていましたが、現場では「いかに手間をかけずに長生きしてもらうか」という現実との葛藤もありました。お世話をしていたご夫婦が相次いで亡くなられたとき、自分の進むべき道を改めて考えるようになりました。
そんなとき、かつてのお店で知り合った8歳年上の上司であり恩師でもある師匠に「独立してお店を出すが、一緒にやらないか」と声をかけていただきました。その言葉に背中を押され、再び飲食の世界へ戻る決意をしました。こうして、恩師とともに「どんとこ」をオープンすることになりました。
ホスピタリティ溢れる優しいおもてなしの接客も美野さんの魅力の一つ!
開業してからはどうでしたか
美野さん
お店は八丁堀に出店し、お好み焼きとフレンチの要素を少し取り入れた鉄板焼き店としてスタートしました。オープン当初から売上は右肩上がりで、順調な滑り出しでした。
しかし、開業から1年半ほど経った頃、突然の交通事故で師匠を亡くしてしまいました。
信じられない現実に打ちのめされ、しばらくは何も手につかない日々が続きました。
実は、どんとこで経験を積みながら、いつかは自分の店を持ちたいと師匠にも話していました。
そんな矢先、師匠から「一緒にこの店を守ってほしい」と声をかけてもらった、その日の出来事でした。
あのときの言葉が、今でも胸に強く残っています。
美野さんが守り続けている「どんこと」の看板
開業に際して困ったことや苦労したことはありましたか?
美野さん
その後のお店の経営は、「大変」という言葉では言い表せないものでした。
精神的にどうしていいのか分からず、何が正しいのかも見えなくなっていました。
技術的にもまだ未熟で、お店の方針も定まらず、まるで迷子のような状態でした。
お客さまからはいろいろなご意見をいただきましたが、聞けば聞くほど自分が何をしたいのか分からなくなっていきました。
そんな中で、自分を見つめ直すために、毎日日記をつけるようにしました。
接客での気づきや、お客さまの好み、感じたことを一つひとつ書き留めていくうちに、少しずつお客さまが定着し、自分の理想とするお店の形が見えてきました。
気づけば、2年ほどで師匠と一緒にやっていた頃の売上を超えるようになっていました。
数字が上向いてくると同時に、ようやく心にも少しずつ余裕が生まれ、「この道で間違っていなかった」と思えるようになりました。
どんとこ三川町本店のカウンター、ライブスタイルでお料理を楽しむことができます
店舗経営していく上で大切にしていることをお聞かせください
美野さん
お店は、自分の内面を映す“体現の場”でありたいと考えています。
経営を続けるうえで、お金を稼ぐことはもちろん大切ですが、それ以上に「なぜ自分はこの店をやっているのか」「何のためにこの仕事をしているのか」という原点を忘れないようにしています。
自分の想いを無視したり、見失ったりしたままでは、どんなに数字が良くても本当の意味でお店は続かない。そう感じているからこそ、いつも心の内と向き合いながら、日々お店に立つようにしています。
毎日の仕込みに時間をかけ、丁寧な仕事を心がけていらっしゃいます
お客さんに支持されている理由、継続できている理由は何だと思いますか?
美野さん
私が「良いお店だな」と感じるのは、ブレていないお店です。
やり方が古くても、最新の流行を取り入れていなくても、ずっと大切にしている“想い”や“軸”が変わらないお店は、長く続いていて、そしてお客さまに愛されているように思います。
その想いに少しでも嘘があると、きっと長くは続かない。
だからこそ、どんな自分になりたいのか、そしてどんなお店をつくりたいのか――その二つが一致していることが大切だと感じています。
生産者さんの想いを大切に食材に感謝する思いで料理に向き合っていらっしゃいます
お店の特長やこだわりについてお聞かせください
美野さん
お店で使う野菜やお肉などの食材は、できる限り生産者の方に直接会いに行き、仕入れています。
食材そのものの質だけでなく、「それをつくる人の想い」や「背景にある本心」に触れ、寄り添うことを大切にしています。
誰がどんな気持ちでこの食材を育てているのか――その想いを感じ取る時間が本当に楽しいんです。
そうした出会いが、お店の味や雰囲気にも自然と表れているように思います。
お客さまの多くも、食への関心が高く、健康やこれからの農業、そして地球環境に興味を持たれている方が多いですね。
だからこそ、自分たちも誠実に食と向き合い、その想いに応えられるお店でありたいと思っています。
ただ“美味しさ”を追求するのではなく、生産者さんの想いまでを料理にのせて届けていらっしゃいます
推しの料理メニューについてはいかがですか?
美野さん
一番の“推し”は、やはり野菜ですね。もちろんお肉も召し上がっていただきたいのですが、うちでは何よりも野菜の種類が豊富で、生産者さん一人ひとりの声や想いが詰まっています。その野菜を鉄板で丁寧にグリルし、香ばしさと甘みを最大限に引き出しています。
お肉に関しても同じで、牛が食べる飼料や環境にまで気を配って飼育されている生産者さんから仕入れています。
そうした姿勢に共感し、扱う素材に対しても丁寧に向き合うようにしています。
調理では、素材が“どう仕上がりたいか”という声を無視しないよう、その日その日の状態を見て火の入れ方や味付けを変えるようにしています。
そうすることで、素材本来の甘みや香ばしさが際立ち、シンプルでありながら奥深い味わいをお楽しみいただけると思います。
さまざまな新鮮なお野菜が直接、農家さんからお店に届きます
今後のビジョンについてお聞かせください
美野さん
日本の食料自給率100%を目指す流れに、自分自身も何らかの形で貢献したいと考えています。今も小さな形では関わっていると思いますが、もっと自分の実感として“確かに貢献している”と思えるような取り組みをしていきたいです。
そのためには、まずは地元・広島の自給率を少しでも上げていくことが大切だと考えています。
仲間たちと一緒に、農家さんをどうやって盛り上げていけるかを日々話し合っています。
将来的には、そうした取り組みを広げて、農家さんと連携した子ども食堂や、農業体験を取り入れたインバウンド企画などにも挑戦したいです。
たとえば、子どもたちが夏休みに1ヶ月ほど住み込みで農業を体験できるようなプログラムができたら面白いと思っています。
食と農を通じて、人と地域がもっとつながっていくきっかけをつくりたいですね。
食材の声を無視しないよう、その日の素材の状態を見て火の入れ方や味付けを変えています
これらから飲食店開業を目指している方に、アドバイスがありますか
美野さん
これからの時代は、いかにお金をかけずにやっていくかが大切だと思っています。
かつては、開業時に設備や内装などに多くの資金をかけることが当たり前だったかもしれません。
でも今は、それよりも「お金以外の何を持っているか」のほうが重要だと感じています。
たとえば、人とのつながりや、応援してくれる仲間、感謝の気持ち、信頼関係。
そうした“お金では買えないもの”をどれだけ積み重ねられるかが、結果的にお店の力になります。
だからこそ、お金以外の強みで勝負できる店づくりを意識してもらいたいですね。
3時間の低温調理で調理した、柔らかく旨みたっぷりのこだわりステーキ
ジャックのひとこと!
ジャック
生産者とのつながりを何よりも大切にし、素材と真摯に向き合う姿勢がとても印象的でした。単に「食材へのこだわり」という言葉では言い尽くせない、作り手や地域への深い感謝と敬意が感じられます。
どんなに立派な食材でも、調理する人がその想いを受け取り、感じ取る感性を持っていなければ、本当の味わいは引き出せません。
その意味で、どんとこさんの料理は、生産者の努力や情熱を“料理という形で伝えている”ように思います。
また、「素材がどうなりたいかを見極める」という言葉には、料理人としての哲学が宿っていました。決まったレシピに頼るのではなく、日々の食材と対話しながら、その時々で最も美味しい形を探っていく。
そこには、食材を一つの“相手”として尊重し、信頼関係を築くような温かさがあります。
さらに印象的だったのは、地域全体を見据えた視点です。
農家をはじめとする生産者との協働や、子ども食堂・農業体験などを通じた食育への取り組みなど、単に「美味しい料理をつくる人」にとどまらず、地域の食文化を未来へつなぐ存在としての想いが伝わってきました。
こうした想いを持つ料理人が増えることこそ、地産地消の推進や食の自給力向上につながり、地域の飲食業が持続的に発展していく大きな力になると感じます。
“食の原点”をまっすぐに見つめ続けるこのお店の姿勢に、これからの飲食業の理想が重なって見えました。

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| 店 名 | 鉄板焼き どんとこ 三川町本店 |
| 住 所 | 広島県広島市中区三川町6-3 プリシアダイコウビル 1F |
| 電話番号 | 082-249-5981 |
| 営業時間 | 月曜日、木曜日~日曜日: 17:30~22:30 (L.O. 22:00) 日曜日限定ランチ 12:00〜 コース 3500円 |
| 定休日 | 火曜日・水曜日 |
| ジャンル | 鉄板焼き |
| WEB | https://dontoko-mikawacho.owst.jp |
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