case.26

Italian Kitchen Dice-k(有限会社オイスターマンズフーズ)

取締役社長
玉井翔 さん

イタリアンレストランの経営に加え、
「菊芋」の生産・加工・販売に注力!

ランチからディナーまで多彩なメニューを取り揃え、誰もが気軽に利用できるイタリアンレストランとして親しまれる東区光町の「イタリアンキッチンダイスケ」。飲食店の傍ら、“牡蠣だし”や“菊芋”の加工食品製造も手掛ける有限会社オイスターマンズフーズの取締役社長・玉井翔さんの仕事にかける想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

飲食業に参入されたきっかけをお聞かせください

1984年生まれの38歳、生まれも育ちも広島です。父が洋食の料理人だったこともあり、幼い頃から飲食業を身近に感じる環境でしたが、自分が初めて現場を経験したのは学生時代の大手ファーストフード店でのアルバイトです。先にバイトをしていた兄に誘われて15歳から始めたところ、仕事が楽しく、調理から接客までひととおりこなせるようなった17歳の時には会社が主宰する技術競技会で“調理部門”の中国・四国・関西エリアで優勝、19歳になると“店舗責任者部門”の中国・四国・関西エリアで優勝することができました。

その後、父の営むイタリアンレストランで本格的に料理修行を開始。2005 年に東広島のイタリアンレストランに店長として勤務したのち、25歳からは、父が南区猿猴橋でオープンしたイタリアン居酒屋「猿猴橋たまい」で働いていました。

とても優しい穏やかな笑顔でインタビューに答えてくださる玉井さん

やはり蛙の子は蛙、飲食の世界に導かれたのですね。さて、現在までの足跡は?

29歳になった2013年に家業を法人化して有限会社オイスターマンズフーズを設立。僕が取締役社長に就任しましたが、まずは故郷・広島を代表する食材、牡蠣の知識を身に付けようと南区京橋の牡蠣料理専門レストランの店長として勤務することに。以後、2年半ほど牡蠣生産者の下での修行を経て、家業に復帰したのちは自分の地元でもある東区光町に2号店として2019年2月にオープンした「イタリアンキッチンダイスケ」をホームグラウンドに活動しています。

玉井さんは、料理人のサラブレッドとして豊富な料理経験をお持ちです

イタリアンキッチンダイスケはどんなお店ですか?

カウンター、テーブル合わせ座席数は30席。本場イタリア、ナポリのトラットリアをイメージした暖かみのある店内で、おひとり様から団体様まで肩ひじ張らず、リラックスして料理をお楽しみいただけます。おすすめメニューは、良質な牡蠣の産地・安芸津から厳選して仕入れた新鮮で大ぶりな牡蠣を使った「焼き牡蠣」や「ガーリックチーズ焼き」、牛の胃袋“ハチノス”をトマトソースで煮込んだ定番料理「トリッパ」、父が35年前から提供している伝統の味「チーズフォンデユ」など。昼は「日替わりランチ」や「パスタランチ」、夜は予算に応じて各種コースを提供しており、料理を引き立てるドリンク類もワイン、ビールはもとより、日本酒や焼酎なども数多く取り揃えています。

大ぶりの牡蠣を素材の味を活かした焼き牡蠣とイタリアンならではにアレンジしたチーズ焼き

近年は、レストラン経営と併せて、「牡蠣だし」や「菊芋」の加工食品の販売に力を入れておられるそうですが

飲食業で培った調理の経験や食材の知識を活かして2009年7月に広島ヤンマー商事さんと「牡蠣だし」の開発に携わったのを機に加工食品の事業化に踏み切りました。牡蠣だしの商品化に成功し、「牡蠣のほかにも商品化できる何か良い食材はないか?」と模索していたところ、たまたま見つけたのが菊芋です。

安芸の菊芋は、美味しく食べられることはもとより、糖と脂肪を抑える効能があります

菊芋とはどのような芋ですか

菊芋は北米産のキク科ヒマワリ属の多年草で、血糖値を安定させる水溶性食物「イヌリン」が食物の中で最も多いとされる健康野菜。最近では、テレビ番組などで取り上げられる機会が増え、知名度も上がりましたが、当時は「菊芋って何?」と言われるくらい、まだまだ世間に知られていない頃でした。糖尿病やメタボの対策にも効果がある点に着目し、手軽に料理に使えて美味しく摂取できるようチップスやパウダーとして加工するのに6年ほど費やして、2年前にようやくオリジナルブランド「安芸の菊芋」として商品化にこぎ着けました。商品名のとおり、広島県産の菊芋にこだわって生産から加工まで、全て地元・広島で行っています。現在は通販のほか、無印良品広島アルパーク店、やまやの主要店舗、広島ブランドショップ「TAU」などで販売していますので是非一度、お試しください!

菊芋を掘り返す“天敵”イノシシや鹿の侵入を防ぐため、畑の周囲に張り巡らす防護柵の設置が大変とのこと

飲食業をベースに順風満帆に推移してこられたようですが、今日に至るまで困ったエピソードなどあればお聞かせください

僕の場合は、飲食業に関わりのある環境で育ち、流れに乗って来ただけなので、苦労がないように見えるかもしれませんが、常に困っていますよ(笑)。イタリアンキッチンダイスケの経営については、昼、夜の営業もあり、仕入れから調理、スタッフの管理に追われる日々を送っていますし、他所の飲食店さんと同様に、ここ1~2年は新型コロナのせいで厳しい環境にありますからね。市内に数あるレストランの中から当店に足を運んでくださるお客様へ美味しい料理と良質なサービスを提供できるように日夜、奮闘しているところです。

牛の胃袋「ハチノス」をトマトソースで煮込んだ定番料理…ハーブを上手に使って臭みなく煮込んでいます

菊芋の事業はどうですか

「安芸の菊芋」事業の方も、菊芋の生産・加工はもとより、販路開拓に至るまで一年を通してやるべきことが山積みで休む暇はありません。まだまだ知名度を高めていかねばならないので、いかに商品を世間に浸透させていくか?が一番の課題です。あれこれ考えたり、試したり、頭を悩ます日は当分続くでしょう!?

安芸の菊芋は、様々な料理に使える万能食材として自信を持ってオススメできるそうです!

玉井さんの経営理念や心掛けていることについて教えてください

何はさておき従業員が第一、とにかく従業員を大切にすることですね。スタッフ全員に楽しく働いてもらい、モチベーションを高めてもらえれば、必ず店に見返りが生まれます。そのためにも経営者として各自に対するケアを怠るわけにはいきません。あと、彼らはいつも僕の背中を見ているので自分が手本になるように努力しています。常に心掛けているのは「人の2倍働いて、人の2倍速く動く」こと。そうすれば人の4倍仕事がこなせるはずです。ただし、その反動で寿命が人の4倍縮む可能性もありますが…(笑)。

Dice-Kの姉妹店である「たまい」のシェフが35年前から変わらず提供している伝統の本格チーズフォンデュ

これから食の世界に参入される方に先輩としてアドバイスをお願いします!

ここ数年の飲食業界の状況を振り返って正直にお伝えすると、コロナによって人々の生活様式が一変した今の時代、よほどの覚悟や突出したセールスポイントがない限り、軽い気持ちで飲食業に参入しない方が良いと思います。

僕たちの場合は、飲食店単体ではなく、菊芋や牡蠣だしといった副業があったからこそ、コロナ禍でもやって来られた気がします。レストランはお客さんに来店していただかなければ成り立たない「待ちのビジネス」ですが、ウチのように加工品の販売といった表に出てPRできる副業があれば、イベントに参加したり、物販によるつながりが出来たり、まだ伸びる余地がありますからね。新規参入される方には、飲食店単体で勝負するのではなく、何か外に向けて発信できる「攻めのビジネス」も備えて始められることをおススメします!

本場イタリア、ナポリのトラットリアをイメージした店内でリラックスして料理を楽しんでいただきたいと玉井さん

ジャックのひとこと

飲食店経営を安定させるためには、他業態の店舗を3店舗持つことと言われています。例えば、焼肉店を経営していた場合、2店舗目は和食店、3店舗目は洋食店と言った具合です。
これにはいろいろと理由があるのですが、一つはリスクヘッチ、もし仮に狂牛病のような牛肉を扱えなくなるような危機的状況になった場合、焼肉店の経営は難しくなりますが、他の店舗ならお店を続けることできます。また、同じエリア内にお店を構えることができるためお客さんの取り合いが起きにくく、食材や人材もまわすことができます。さらに、近隣同士のお店なので、オーナー自身が、頻繁にお店をまわることができ、目が届く範囲で多店舗経営をすることができます。

Italian Kitchen Dice-kさんでは、安芸の菊芋を手掛ける有限会社オイスターマンズフーズを立ち上げ、新事業展開を進めていらっしゃいます。玉井社長がおっしゃるように、まさに「攻めのビジネス」で、コロナ禍を乗り切る企業努力をされています。玉井社長の挑戦をジャックも応援しています!

このサイトの運営・管理は株式会社ジャックとまめの木が行っております