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trattoria bar il Giorno(トラットリア バール イルジョルノ)

オーナーシェフ
石井尚 さん

厳選食材をふんだんに使った優雅なイタリアンと
芳醇なワインとのペアリングを心ゆくまで愉しむ!

グルメな大人たちが集う隠れ家イタリアンとして知られる中区堀川町の「トラットリア バール イルジョルノ」。伝統的なイタリアンの味わいに和洋中の調理技術やテイストを組み合わせたお洒落で現代風な料理の数々。こだわりの料理を臨場感たっぷりに作り上げるオーナーシェフ石井さんのイタリアンへの想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

飲食業の世界に進まれた理由と開業までの足跡をお聞かせください

石井さん

呉市出身、1976年生まれの46歳です。呉の阿賀生まれですが、幼い頃から広島で育ちました。ものを作るのが好きで、建築家に憧れ、広島市立広島工業高等学校に進学しましたが、なかなか勉強についていけず、飲食店でバイトをしていたこともあって、そのまま料理の世界に飛び込みました。幼い頃から食べていた中華料理に魅了されたことや父親が板前だったことが影響しているように思います。
父は神戸の料亭出身で、割烹料理の料理長を務めたこともあり、私も料理に慣れ親しんでいました。父の魚釣りや貝掘りに付き合わされ、いつの間にか食材に詳しくなり、父の料理のおかげで舌も肥えました。
ところが、選んだのは日本料理ではなく中華料理でした。父の反対はありましたが、日本料理の厳しさを知っていましたし、魚臭いイメージもあって、日本料理には進みませんでした。

気さくにインタビューに答えるくださる石井さん…イタリアのオヤジを目指して金髪に口ひげだそうです!

中華料理からなぜ、イタリアンを開業しようと思ったのですか

石井さん

2年ほど中華料理店で修行した後、洋食店にも勤めました。ある時、イタリアンの代表的なパスタ「ジェノベーゼ」に出合ったのです。緑のパスタ…「これは何だ?」と衝撃を受けながらも、とても感動しました。それがきっかけでイタリアンに興味を持ち、Zona ITALIAなど10店舗以上のイタリアン店を経営しているメイプルシティで10年ほど働きました。
メイプルシティでは新店舗の立ち上げなどに関わりながらイタリアンを学びましたが、次第に和食の偉大さに気づき、割烹居酒屋に転職し5年、そして、2012年12月24日にこの店をオープンして、今年でちょうど10年になります。

イタリアンシェフとしては珍しく和洋中で修行されたキャリアをお持ちです

開業に際して困ったことや苦労したことはありましたか

石井さん

物件探しに苦労しました。あまり開業資金もなかったので居抜きを探しましたが、なかなか見つかりませんでした。5坪ぐらいの小さなお店でワンオペでできるイタリアのバールのようなスタイルを目指していました。出店の場所として流川を求めていた訳ではなかったのですが、望んでいたような良い状態の居抜きの店が流川に見つかり、場所も新しいチャレンジだと思って決めました。

カウンターでシェフとの会話やライブ感を楽しみながらお食事を愉しめます

開業した当初は、どうでしたか

石井さん

オープン時にはパスタのランチセットを980円で出したところ行列ができるほどの人気でした。次第に夜のお客さまも増えていき3年ぐらいはとても好調でした。しかし、最初の頃は回転率の悪さや予約の間違いなどいろいろと不備があり、お客さまにご迷惑をおかけしてしまいました。
また、当初は従業員も雇っていましたが、うまく教育もできず、アルバイト含め雇用にはとても苦労しました。週1回のアルバイトスタッフが7、8人いたこともありましたし…誰にどこまで接客や掃除を教えたかなど自分が混乱することもありましたよ。(笑)
今は、妻が店を手伝ってくれるので楽ですが、それに甘えず、人を雇って育てたいですね。

贅沢にふんだんなウニを使った絶品パスタ…人気メニューの一つです

トラットリア バール イルジョルノさんは、どのようなお店ですか

石井さん

トラットリアはイタリア語でカジュアルレストラン、バールは酒場を意味します。イルジョルノは、イタリア語で「終日」、その日の食材やその日の雰囲気、その日の出会いを大切にしてお店をやっていきたいという思いで店名にしました。リストランテのような高級な食材も使っていますが、お子さまにも楽しんでいただける、気軽に入りやすいお店を目指しています。

とろけるお肉と濃厚なウニのベストマッチ!

料理の特長やメニューについてのこだわりをお聞かせください

石井さん

魚介類は主に豊洲から。特にウニは推しの食材なのであまり利益にはならないですが、なるべく良いものを仕入れています。
また、季節ごとに仕入れるトリュフやブランドの「神石牛」などもこだわりの食材です。神石高原で育つ神石牛は常に品質が安定しており、飼育から屠畜、販売まで一括で行う業者さんと信頼関係のもとで取引をしています。

自然の甘みを堪能できる濃厚な旨味たっぷりなウニ…豊洲から仕入れます

どのような宣伝をして集客されていますか

石井さん

広告販促はInstagramとTwitter、FacebookなどのSNSを使っています。特にInstagramにはタイムリーなお料理や食材を毎日のようにアップしています。Instagramを活用する前は、HOT PEPPERなどの飲食店検索サイトを利用していましたが、今は、食べログを無料で使って更新するぐらいですね。
当店はInstagram を見てお越しになるお客さまがとても多いです。Instagramは、無料の媒体にも関わらず多くの方へ向けて宣伝告知ができ、フォローすることやフォロワーが増えることでお客さまともつながることができるため、飲食店にとってはとても費用対効果の高いツールだと思います。

色とりどりの野菜やたっぷりなトリュフといただくタリアータ

お客さまに支持されている理由は何だと思いますか

石井さん

常連さんのおかげで、紹介が紹介を呼び、お客さまがどんどん増えていったように思います。お店に通っていただけるのは、料理の質だと思います。お客さまにソースや味付けとともに、ワインとのペアリングが楽しめる料理としてお気に召していただき、自信になりました。
接客サービスでは対話を大切にしています。お客さまの好みをお聞きして味付けに変化をつけた料理を提供する工夫をしています。苦手な食材やアレルギーを前もって聞くのはもちろんですが、食べたい食材のことや料理イメージなどもお聞きするようにしています。コース料理であってもその日の状況に合わせてリクエストの料理をお出しできるように、それぞれのお客さまの要望にできるだけ応えて満足していただきたいと考えています。そして、それが料理人の仕事ではないかと思っています。

透明感のある新鮮な生しらす…宝石のごとく輝いています

店舗経営していく上で大切にしていることをお聞かせください

石井さん

利益が出る経営をすることが大切だと思います。店に資金がないときちんとしたものを仕入れられなくなり、料理のクオリティーやサービスの質が下がってしまうだけでなく、継続できなくなってしまいます。
料理の価格はシビアに考える必要がありますが、料理の技術や目利きの差別化やオリジナルメニューなどの付加価値をつけて、それに見合った価格で料理が提供できるように努力しています。
表現は悪いかもしれませんが、飲食店も一企業と同じようにしっかり儲けないといけないと思います。お金がないと、自分にも投資ができず、料理の勉強にも行けないですから。時間がないなかかで妻はソムリエの勉強をしています。儲けるためには、これも必要なことだと思います。

広島ブランド牛「神石牛」きめ細かな肉質は、しっとりとして旨味が濃くなめらかな食感です

今後のビジョンについてお聞かせください

石井さん

今はトラットリア バールですが、食材にもこだわり、コース主体でワインとのペアリングを楽しんでいただけるリストランテになっています。
次に店を出すならリストランテとして、より接客サービスも充実させ、もう少し広い空間で料理をお出ししたいと考えています。
料理人だけでなく、フロアーやソムリエも育てたいですね。料理のスタイルもイタリアンだけにこだわらず、自分がやってきた中華や和食のテイストを組み合わせながらいろいろな料理を出したいですね。また、店の横ではワインショップやケーキなどを販売できるドルチェの店も併設したいと思います。

フライパンの洗い方にも技術があるとのこと。使用した後にすぐに洗うことが大切だそうです

お店の展開以外でも何かやっていきたいことはありますか

石井さん

店舗経営の勉強をしたいですね。商工会議所などのセミナーなども積極的に参加していきたいです。また、有名店のシェフの考え方やシステム、料理の見せ方などはとても気になりますし、参考になります。同じようにできるとは思いませんが、何かに活かせるのではと常に考えています。
料理人としての考え方を常に持っていたいです。食材であれば、海や山のことも知っておくべきですし、環境や地域のことも意識できれば…。最終的には、まちづくりにも関わっていければ最高ですね。

料理人としてはもちろん、経営者としての感覚を持つことも大切にされています

これらから飲食店開業を目指している方に、アドバイスがありますか

石井さん

売れる仕組み、儲かる仕組みを考えることが大切だと思います。特に開業前にはリサーチをしっかりすべきです。客層ターゲットや世の中のニーズを掴むことも大切です。自分のやりたいメニューや店のスタイルを世の中や場所に照らし合わせていくのは大事ですね。
あとは、やはり資金をたくさん持つことですね。開業にも費用がかかりますし、お店の運転資金にも余裕がないとクオリティーやサービスが保ちにくくなります。最初は難しいですが、常に目標を持って、段階を踏みながらお店を育てていくことが大切だと思います。

笑顔でお店の外まで見送ってくださいました…ありがとうございました

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