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cafe fragrant(カフェ フレグラント)

オーナー
越岡芳史 さん

ネルドリップにこだわった口当たりの柔らかい味わい深いコーヒーと、
優雅な時間が流れる安らぎの空間

舟入町の電車通り沿いにあるカフェ「cafe fragrant」。コーヒーの芳醇な香りの漂うモダンな店内にはカウンター席が10席。自慢のブレンドコーヒーはもちろん、パティシエでもある越岡さんが作るケーキやプリンなどのデザートも人気です。親しみやすいカフェとして地元の方々に愛されている理由とは?…ジャックが聞かせていただきます。

カフェを始められたいきさつと開業までの足跡をお聞かせください

越岡さん

広島市中区舟入町出身、1980年生まれ。42歳です。建築に興味があり、製図を引きたくて広島市立広島工業高等学校を選びました。ところが、実家が理容室で両親が共働きだったこともあり、子どもの頃から自分で料理する機会も多くケーキやクッキーなども作ったりしていましたので、卒業後の進路は料理より好きだった製菓を選び、京都製菓技術専門学校に進学しました。
そこで洋菓子や和菓子、パンを学び、安佐北区にある「西洋菓子処バイエルン」でパティシエを目指し4年間修業した後、「てらにし珈琲」へ転職。「てらにし珈琲」では、コーヒーはもちろん、ホットサンドなどの調理やデザート作りなど、調理場とホールの業務を担当し、12年間勤務しました。2018年7月に念願だった自店「cafe fragrant」オープンしました。

インタビューに答えてくださる越岡さん…いかにもカフェのマスターの風格を感じます!

開業までの準備やお店はどうやって探しましたか

越岡さん

場所探しには、1年ぐらいかかりました。その間に職業訓練学校に通い、フードアドバイザーの勉強などもしました。この場所にあって閉店したつけ麺屋の前に管理会社の連絡先が貼ってあったのです。この場所ならと思って連絡してみました。家賃は高かったのですが、すぐに決断しました。
しかし、この期間は収入がないのに出費がかさみ、精神的にきつかったですね。早く開業して働きたいと思っていました。

お店は広島電鉄の「舟入幸町」の電停の向かいにあります

開業に際して困ったことや苦労したことはありましたか

越岡さん

開業資金は、こつこつ貯めていた貯金を充てることができましたが、店舗改装費は当初の予定より費用がかかりました。内装費に費用をかけると設備費を削るしかなく、食洗機を諦めたりしながら、必要最低限のものを揃えました。

コーヒーの芳醇な香りが漂う店内では、コーヒーを楽しみながら思い思いの時間が過ごせます

開業してからはどうでしたか

越岡さん

最初は、売上げが安定せず苦労しました。オープン時はがむしゃらにやっていましたが、通勤時間が長い上に夜も遅い生活で体力的にきつくて、体調を崩してしまい、お店を半月休業したこともありました。
次第に仕事に慣れて、時間の使い方やローテーションで業務を回せるようになってきました。お客さまが増えて行くにつれて気持ちに余裕も出てきて、営業時間を短縮したり、住まいをお店の近くに替えたりして、ずいぶん体力的に楽になりました。

自慢のブレンドコーヒー…濃いめでありながら飲みやすく、しっかりとしたコーヒーの風味を感じます

提供しているコーヒーの特長やこだわりについてお聞かせください

越岡さん

コーヒー豆は、てらにし珈琲さんのブレンドを使わせていただいています。ブラジル、グアテマラ、コロンビアの豆をブレンドした当店のコーヒーは、こだわりのネルドリップ抽出。起毛した布「フランネル」で抽出するための管理は難しいのですが、ペーパーやサイフォンに比べて口当たりが柔らかく、コーヒー本来の味を引き立ててくれ、濃いめでありながら飲みやすいと評判をいただいています。

こだわりのネルドリップ抽出…豆が持つ本来の旨味を存分に抽出できるため、玄人にも好まれている抽出方法の1つ

ブレンドとストレートの違いを教えてください

越岡さん

コーヒー豆の銘柄は、「ブラジル」「コロンビア」など生産地の国名や、産地や発信地となる山や港の名前が使われたりします。
「ストレート」は、銘柄の豆そのものの個性をダイレクトに味わうことができます。
一方、「ブレンド」はそれぞれの個性を活かしながら組み合わせることで、新しい味わいを創造できるのが最大の魅力です。酸味のある配合、コクのある配合、苦味のある配合など、作り手や店によって配合が異なるため、「店の味」を楽しむことができます。
また、同じブランドの豆でも焙煎によっても風味が変わって来ます。私はブレンドコーヒーが飲みやすくバランスもよくて好きです。お客さまにも自信を持ってお出ししています。

焙煎したコーヒー豆…焙煎によって香りや、苦味、酸味、甘味といったコーヒー独特の風味が生まれます

お客さんに支持されている理由は何だと思いますか

越岡さん

場所柄もあって比較的、年配のお客さま方が多いので、カフェですが、コーヒーショップやフランチャイズなどのコーヒースタンドと違い、店の雰囲気づくりにもこだわり、昭和のような雰囲気の喫茶店スタイルを目指しています。
また、コーヒーやケーキ、デザートなどのクオリティーはもちろん、清潔感を大切にして、店を磨き上げています。

季節のケーキの「抹茶プリン」cafe fragrantさんのプリンは、昔ながらのちょっと固めのプリンです

店舗経営していく上で大切にしていることは

越岡さん

やはり、お客さんに喜んでいただくことです。私が働いてきたバイエルンさんもてらにし珈琲さんもその想いを大切にされていましたし、私が学んできたことです
具体的には、第一に味、クオリティーです。いつでも同じコーヒーの味を提供できることを大切にしています。それがお客さまの信用につながり、リピートしていただける理由だと思います。そして、接客サービス。お客さまへの気づかいや心遣いができるよう努めることが信頼を生み、常連客さんが増えていくのではと思います。

季節のケーキの「クリーミーショコラ」柔らかい生チョコでスプーンですくっていただきます

今後のビジョンについてお聞かせください

越岡さん

店舗数を増やすことやチェーン展開などは全く考えていません。でも、身体が続く限り現場には立っていたいので、身体を壊さないよう調整しながら働ければ…。今のスタイルを崩さずに新しい取り組みはやっていく必要がありますが、この店は、地元の方やお客さまに長く愛される店として、続けていきたいですね。
将来的には人を育てていくことも必要かなとも思います。今はなかなかできないですが、自分が教わったことを次世代の方に伝えていければ幸いです。最終的には店舗付きの一軒家で生涯コーヒーを淹れていたいですね。カウンターだけの小さな店でゆっくりと過ごしたいと思っています。

店名になっている「fragrant」は香りが良いと言う意味…香しいカフェにピッタリですね

これらから飲食店開業を目指している方に、アドバイスがありますか

越岡さん

自信を持つことです。味でも接客でも何でも良いと思いますが、今までやってきた芯がなければ折れてしまいます。不安だとあれこれ手を出して、結局は上手くいかないということになりかねません。絶対に自信のあるもの、ブレない強みを持つことが大切だと思います。また、他店とは違うもの、差別化を追求していくことも重要でしょうね。

毎日、丁寧な仕事を心がけていらっしゃる越岡さん…人との出会いを大切にされています

ジャックのひとこと

ジャック

カフェや喫茶店は、同じ飲食業の飲食店とは少し業態が異なります。飲食店の場合は、お料理やお酒を提供し、営業時間もディナータイムがメインになることが一般的です。一方、カフェは、お昼の営業がメインとなり、お客さまの滞在時間が長い割りに、ほとんど追加注文も入らず、比較的客単価が低くなりがちです。そのため、日々の売上げを大きくすることは難しく、より利益を残すための施策や緻密な数値管理能力が必要となってきます。
cafe fragrantさんでは、できるだけ無駄な出費を抑え、しっかりと在庫管理をして的確な仕入れをすることで原価を下げる工夫をされています。
また、アルバイトやスタッフを使わずワンオペでできるようシステム化され、人件費を大幅に抑えながら、FLコストをコントロールしています。まさに堅実な経営を心がけていらっしゃいます。
末長くお店が続くよう、ジャックも応援しています!

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