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タンしゃぶ亭・衝青天

代表取締役
長野淳一さん

コロナの逆風も「ピンチはチャンス!」
しゃぶしゃぶに続き牛タンラーメン店。

心と身体を整える牛タン料理を個室で寛ぎながら味わう、上質なひと時を過ごせる店が中区薬研堀の牛タン専門店「タンしゃぶ亭」。コロナによる逆境の中、同店の別館として牛タンラーメンの店を矢継ぎ早に出店するなど積極展開を続ける株式会社WAKUWAKUの代表取締役・長野淳一さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます

飲食業に参入されるまでの足跡を教えてください

長野さん

宮崎県出身、1978年生まれの44歳です。宮崎では高校までずっと野球三昧、18歳の時に山県郡のスポーツ医学専門学校に進学するため、広島にやってきました。野球を続けたくて進路を選んだわけですが、手首の骨折により断念せざるを得なくなり、卒業後はフリーターとして北広島町の居酒屋でアルバイトをスタート。作った料理に反応してもらえ、お客さんと仲良くなれる飲食の仕事にだんだん魅力を感じたことから飲食企業に就職することを決め、広島市内中心部の店舗で5年間働きました。

県北に比べ、華やかな市街地の店舗での仕事は楽しく、その後も別の飲食企業に転職を重ね10年以上経験を積むことに。わたしの場合、料理は調理専門学校で学んだわけではなく、全て現場で身に付けたものです。修業期間のうち2年間は名古屋へ単身赴任したのですが、名古屋は独自の食文化もあり、お洒落な店も多いので、とても勉強になりました。

他店舗展開をされている長野社長…最近はラーメン店にいることが多いそうです

修業を経て、広島では珍しい“タンしゃぶ”の店を開業されたきっかけは?

長野さん

周りの仲間が独立していく中、故郷の宮崎に帰るタイミングもなかったので、自分も広島で飲食店を開くことを決め、店の料理に選んだのが名古屋で修業時代に流行っていた牛タンを使ったしゃぶしゃぶです。当時、まだ広島ではしゃぶしゃぶで牛タンを専門に扱う店がありませんでしたからね。前職の会社が経営していたしゃぶしゃぶ店の跡を引き継ぐことにして開業準備に取り掛かりました。

低カロリーで高タンパクな牛タンをしゃぶしゃぶや焼きメニューで美味しく味わっていただくため、現在の納得できる状態になるまで肉屋さんの選定には試行錯誤を重ねましたね。
こうして2020年1月のオープンに漕ぎ着けたわけですが…。もうお分かりのようにオープンしてすぐにコロナの洗礼を受けることになってしまいました。

カラダが喜ぶ高タンパク低カロリーの牛タンをしゃぶしゃぶでいただきます

開店直後に逆風に見舞われるとは大変でしたね。どうやって切り抜けられましたか

長野さん

ようやく開店できたのに、新型コロナが広がり始めたばかりで、まだ国の援助もなかったし、どこもお金を貸してくれない、といういきなり試練が訪れました。「何とかしないといけない」と開始したのが牛タン弁当のデリバリーです。実は名古屋で修業時代にデリバリーのノウハウを修得していたので、広島市内でUber Eatsなどの宅配サービスが始まるのに合わせて、逸早く取り入れてみたんですよ。結果、巣ごもり需要が高まる中、他所の店にはないメニューが評判となり、予想以上に当たってくれました。

併せて、自粛期間もウチの場合は全室個室であることを強みに、コロナ対策を徹底して営業を続けることにしたところ、逆にコロナで知名度を上げることになり、客足を確保できたんです。SNSで「ピンチはチャンス!」とつぶやいたら、ネット上で「不謹慎だ」と叩かれてしまいましたが(笑)。

コロナが少し落ち着いた現在は、牛タンしゃぶしゃぶを筆頭に、厚切り牛タン炙り、牛タン炙り刺しほか、各種コース料理をメニューに揃え、普段使いの店としてはもとより、記念日など特別な日の会食や接待にも利用していただけるようになりました。

タンしゃぶ亭ではアラカルトの牛タン料理も充実しています

そして、昨年からは牛タンラーメン店も出店されていますね

長野さん

はい。タンしゃぶ亭が夜の営業なので、何か昼の業態が欲しいと考え、牛骨のスープに牛タンをトッピングしたラーメンの専門店を思いついたんです。店名は、わたしが尊敬する渋沢栄一が詠んだ漢詩にちなんで「衝青天(セイテンヲツケ)」と命名。2021年8月に1号店を流川に、今年(2022年)7月にそごう広島店10階に2号店を、翌8月に3号店を可部駅前に出店しました。繁華街(流川)、百貨店内(紙屋町)、自宅近くで地の利のある郊外(可部)と3つのエリアに出店したところ、ローカルテレビ局全局に取材していただき、おかげさまで各店とも好調に推移しています。

炙り牛タンのほど良い弾力のある食感と10時間炊きあげた自慢の濃厚牛骨白湯スープの牛タンラーメン

牛タンのラーメンも人気ですよね

長野さん

メニューの一番人気は牛白湯スープが特長の“牛タン濃厚塩ラーメン”。特に女性の方に評判が良いみたいですね。なお、各店舗では、自分も関心のあった“子ども食堂”の活動に参加したいという思いから「夢食堂」と銘打ち、大人のお客さんが200円で“夢チケット”を購入すると、その200円を店の食材費に充て、中学生以下の子どもたちがこのチケットを使って無料で食べられるシステムを実施しています。貧困でおなかをすかせた子どもたちをなくすためにも、飲食店ができることとして「お店が営業している時は毎日食べに来ていいよ」のスタンスで続けて行くつもりです。

ペイフォワード精神の「夢食堂」素敵な取り組みですね!

素敵な試みですね。では長野さんの夢やビジョンをお聞かせください

長野さん

昨年9月に今後の事業展開を踏まえて運営母体を法人化したのですが、商号として名付けたように自分も周りのみなさんも“ワクワクすること” をやっていきたいですね。

まずは、ラーメン店舗ないしは違う業態のFC展開を考えています。最近は、牛タン関連の店舗の経営の他に催事用ブランドとして立ち上げた高級モンブラン専門店「栗山水」の販売にも拍車をかけているので、FC展開にこれらを組み合わせた新しいカタチが出来れば面白いでしょう。いずれにせよ、今はまだ将来に向けての通過点。広島で終わるつもりはないし、いつかは海外進出を実現するのが目標です。

流川にある牛タンラーメン衝青天(セイテンヲツケ)

なるほど、ワクワクする取り組みですね

長野さん

一方、わたしは個人的に“食育インストラクター”“ナチュラルフードコーディネーター”“サケエキスパート” “飲食版戦略MGメネジメントゲームインストラクター”などの資格を取得して、「食」の知識と経験を貪欲に追求し続けています。現在、全国で発足が進む「飲食業経営審議員会」を広島で立ち上げる活動にも尽力したいですね。飲食業に従事する方は料理することには長けていますが、政治・経済はじめ、世の中の流れを知らない人が多く、コトが起こった時にあたふたするケースが少なくありません。業界をあげて飲食業に関わる人が勉強する場を作っていく必要を感じ、広島での発足を急いでいるところです。かつて「居酒屋甲子園」大会を通じて親交を深めた全国の仲間とも連携しながら、地域の飲食業を盛り上げていくことができれば!

全席完全個室で落ち着いた雰囲気で過ごせるタンしゃぶ亭

これから飲食業界に参入される方に先輩としてアドバイスをお願いします!

長野さん

計画的に事業を行うことではないでしょうか。正直なところ、わたしは「やってみてから考えよう」と無計画に思いつくまま事業を展開してきましたが、今日まで店が予約でいっぱいになったり、大きな失敗もなくやって来れたのは、たまたま運が良かっただけのことだと感じています。確実に売り上げを伸ばし、経営を安定させるためには、やはりきちんと準備して綿密な事業計画を立てて着手されることをおススメします。

そのためにも料理やサービスだけに限らず、広い分野のことを勉強して沢山の知識を身に付けておいて欲しいですね。特に経営者になる方は、社会の動きについて「言葉の意味もわからない」なんてことがないようにしっかり勉強してください。

飲食店を運営していくには経営を学ぶことが大切、日々の勉強が大切だそうです

ジャックのひとこと!

ジャック

飲食店を繁盛させ継続させるためには、お店を経営することが大切です。美味しい料理を作ってお客さまに提供しているだけでは、飲食店経営はできません。経営するためには、料理や接客だけでなく、ディレクターや監督としての役割、スタッフや顧客、食材の管理など、全てのものを数値管理していくことが重要となります。数字を読むことができなければ経営は不可能だからです。

長野社長は、多店舗展開もされ、しっかりと飲食店経営をされています。経営の勉強会やセミナーにも積極的に参加され情報収集にも努めていらっしゃいます。
長野社長の日々精進されている姿勢、ぜひとも見習いたいですね!

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