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Chinese dining 夢

代表取締役
王革さん

中国のIT企業勤務を経て26歳で来広。
周りを幸せにする飲食ビジネスに挑戦!

“コスパの高い本格中華が味わえる店”としてオフィス街の人々に愛される中区八丁堀の
「Chinese dining夢」。同店のほか、カープロードの系列店「酒家 夢」やエキエ内で弁当&惣菜店も経営する株式会社広通の代表取締役・王革さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

まずは、王さんのプロフィールをお聞かせください

王さん

1966年11月24日生まれ、中国四川省の省都・成都の出身です。大学を出てIT関係の企業に就職していましたが、当時の中国では外国へ行って見聞を広めることを希望する若者が多く、わたしもその一人でした。日本語を勉強していた兄の友人が福山市にいた縁もあり、26歳の時に日本へ。1993年から福山市のYMCA国際ビジネス専門学校で学んだのち、1996年に広島市立大学に入学して大学院にも進み、経済学の博士課程を修了しました。その後、中国でIT関係に従事していた経験から、広島でシステム開発の会社に5年ほど勤務し、中国と日本の技術者との通訳や、中国へアウトソーシングする交渉などを担当していましたが、バブル崩壊を機に独立することに。他のビジネスに挑戦したくなり、中国の旅行会社向けに日本の観光情報を紹介するフリーペーパーを発行していたところ、東北大震災が起きて進めていた企画が流れたり、アクシデントが続いて行き詰まってしまいました。

おおらかな表情でインタビューに答えてくださる王さん…中国より日本での生活の方が長くなったそうです

来日後、IT関連など別のビジネスを経て、飲食店を開業された切っ掛けは?

王さん

昔から料理するのが好きでした。広島で日本人の友人も増えたので、自宅に招いて中華料理をふるまうと、みなさんとても喜んでくださるので「料理で商売できるのでは?」と勘違いしたんですよ(笑)。ちょうど、中国で飲食店を開いた経験を持つ妻の弟がいたので、日本に呼び寄せて一緒にやろうと、彼の就労ビザをとるため、会社を作りました。そして2013年9月23日、以前はイタリアンレストランが入居していた現在の場所に「Chinese dining夢」をオープン。わたしが47歳の時のことです。

店内は広く宴会やグループでの食事会にも最適です

広島市内で店をオープンされてみていかがでしたか?

王さん

最初は、わたしと弟にアルバイトを加えた5人体制でスタート。オフィス街の中心にある店舗の立地もあり、ランチ営業の定食類や麺類から一品料理、コース料理までリーズナブルで豊富なメニューを揃えてみました。中国はどちらかというとしょっぱい味付けが多いので日本人の味の好みに合わせて四川料理と上海料理の間くらいの味の料理も工夫していますが、開業時は、日本での暮らしが長い分、味付けを担当するコックよりも「自分の方がセンスが良い」と感じたりしたものです。

本格的な中華料理から大衆的なお料理まで、リーズナブルな価格で楽しめます!

お昼のランチも好評なんですよね?

王さん

お客様は、近隣で働くサラリーマンやOLさん、官公庁の職員の方、YMCAの学生さんなどが主力です。出足からランチは盛況でしたが、夜は苦戦しましたね。転勤族の方が多いので異動で常連さんが急にいなくなるのも痛かった。夜の方も徐々に会社関係などの宴会予約が入るようになりましたが、時期によって波があります。

ちなみにYMCAの学生さんの中には中国人留学生も多く、ふだんは毎日20人くらい来店してくれます。留学生には広島でも故郷の味を思い出して欲しいので商売抜きでサービスしていますが、ここ数年はコロナによる規制で留学生が来日できないことから、以前のように賑やかな姿が見られず、少し寂しいですね。

800円前後のお昼のランチはメイン料理に小鉢がたくさん、スープや杏仁豆腐もつきます!

コスパの高いメニューが評判ですが、さて王さんイチオシの料理は?

王さん

ぜひ召し上がって欲しいのは、ぷりぷりの大きな海老にふわふわの卵白をかけた「芙蓉エビ(ふようえび)」です。優しい味が特長の上海料理の真髄ともいえる一品で、お客様の間でも1番人気になっています。

あと、辛く痺れる美味しさの四川料理を体感されたい方には“麻婆豆腐の石鍋”をおススメします。ぐつぐつ痺れる辛さが売り物で、病みつきになる方も少なくありません。ほかにも、こってり系が多い本場の味を日本風にさっぱりアレンジしたオリジナルレシピの開発にも力を入れているので、当店でしか味わえないお気に入りの料理を見つけていただければ!

看板メニューの「芙蓉エビ」…卵白で炒めた海老はぷりぷりです

Chinese dining夢の系列店舗についても教えてください

王さん

5年ほど前に広島駅ASSE(アッセ)で中華弁当屋さんが閉店するので「跡を継いでやってみないか?」とのお話をいただき、弁当と惣菜の販売を開始しました。JR広島駅のリニューアル工事に伴い、2021年からは広島駅北口のエキエに場所を移して営業しています。

また、2020年3月にはマツダスタジアムに通じるカープロードの愛宕踏切前に姉妹店となる中華居酒屋「酒家 夢」をオープンしました。カウンター7席、テーブル4席で30人収容できる気軽に立ち寄れる中華料理居酒屋です。カープの試合がある時は店頭で唐揚げや餃子、ビールなどの応援セットを販売しています。

広島駅ASSEにあるお弁当専門のお店、いつもたくさんの人で賑わっています

お弁当などの中食事業も展開をされているのですね

王さん

両店舗のスタートにより、カープの試合が行われる時などは、八丁堀のキッチンで弁当や総菜を作って運ぶため、わたしも朝2時半から厨房に入って9時までに配達、帰宅して少し眠ってからChinese dining夢に出勤…という1日16時間くらい労働する日もありました。ある日、急に息が苦しくなって倒れてしまい、病院に運ばれると心臓の調子が悪いとのこと。資金繰りは厳しかったのですが、身体を壊したのを機に、流石に求人の必要性を感じ、現在はコック、調理補助、販売員など含め、従業員9人体制で回しています。

夢さんのお弁当はおかずの種類が多く、ボリュームもあって驚きです!

王さんが飲食店の経営を行う上で、大切にされている思いとは?

王さん

来日してから来年で30年を迎えます。大学入学のため、初めて訪れた時は、八丁堀の福屋百貨店から紙屋町のバスセンターまで行く方法すら人に聞いていた広島の街で、考えてもいなかった飲食のビジネスを続けているとは自分でも不思議です。日本に来る前に働いていた会社は中国でも有名なITの大企業だったので、むこうの友人たちも今のわたしの姿をみたら、きっとビックリするでしょうね。

今日に至るまで、決して平坦な道のりではありませんでしたが、飲食業のやりがいは感じています。最近は「お客様が満足できるサービスや料理、商品を提供することで従業員とその家族の幸せを実現する!」を自分のテーマに掲げるようになりました。お客様から従業員まで、周りを幸せにすることを自らの使命とし、これからも精進していきます。

王さんは書道もお上手です…店内には王さん直筆の書が飾ってあります

店名ではありませんが、王さんの夢をお聞かせください

王さん

ひとつは広島駅にもう一店舗、出店すること。もう一つは料理の生産拠点となるセントラルキッチンを開設することですね。現在は、八丁堀の店舗で系列店の弁当や惣菜を調理していますが、機能的にも効率的にも改善する必要があり、それぞれの店を連動しやすい場所に新しい調理施設を確保しようと考えています。

山椒の香りと痺れる辛さがクセになる人気メニュー「麻婆豆腐」

母国を離れ、勉学のために訪れた広島で思いもよらず、飲食業に携わることになった王さんですが、これから開業を考えている人に何かアドバイスがあれば。

王さん

何ごとも楽に考えてはいけない。これが基本です。自分でやってみて、こんなにキツイとは思いませんでした。無理して頑張りすぎると、わたしのように身体を壊すのが関の山です。あと、あれやこれや、いろいろ事業を計画しても結局、お金は半分も入ってきません。実際、ウチの場合もASSEや愛宕店が加わって2019年は開業以来、最高の業績でしたが、翌年からコロナが広がり始めると状況は一変して、ひどい目にあいましたからね。とにかく無駄な出費を減らすこと。何か不測の事態が起こっても対応できるよう、まずはお金を使わないようにしてください!

事前予約が必要ですが、ディナーメニューでは北京ダックもいただけます!

ジャックのひとこと!

ジャック

夢さんの魅力は、料理の味だけではなく、そのバリエーションの豊富さやボリューム感、価格もリーズナブルで提供していることです。そのため、冷凍のものや加工品をできるだけ使わないよう毎朝、仕込みに時間をかけ、お料理の品質と価格を抑えるために工夫をされています。
食材を大量に仕込み、短時間で一気に調理できる中華料理のメリットを活かしたお弁当などの中食事業も好調です。中食ブームは、コロナ禍よりも前からその動向がありましたが、コロナになって急速に伸びた業態であり、まさに時代に合った経営をされています。
そのときどきの状況や流行などにアンテナを立て、動向を見極めることは、経営をする上でとても大切ですね!

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