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天咲

代表取締役
溝口佳矢 さん

尾道で唯一の天ぷら専門店
キッチンカー事業にも意欲!

瀬戸内で育まれた鮮度と旬にこだわった食材をカラッとサクサクの軽い口当たりの天ぷらに!尾道では唯一の天ぷら専門店として地元はもとより観光客にも人気の「天咲」(尾道駅前再開発ビル2階)。運営母体、株式会社天咲の代表取締役・溝口佳矢さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

飲食業に参入されるまでの足跡を教えてください

溝口さん

広島市出身、1981年生まれの41歳です。広島市安佐南区で生まれ育ち、市内の高校卒業後、大学は東広島市の広島国際大学へ進学しました。大学時代は学業そっちのけで、アルバイトに熱中し、ケーキ屋、中華料理屋、牛めしチェーンの松屋の3つを掛け持ちしていましたね。大学卒業後は、アルバイトの流れで松屋の運営母体である“松屋フーズ”に就職。勤務先となったのは横浜など、関東エリアの店舗でした。関東での在任中は、店長やエリアマネージャーなどを歴任する一方、学生時代のケーキ店のアルバイトで興味を持ったパティシエの勉強をしておこうと、新宿の製菓学校にも通っていました。

ところが、28歳の時にアルツハイマー病となった実家の祖母の介護もあり、広島に戻ることに。この頃から「将来は飲食店をやりたい」という夢を抱いていたのですが、そのためにもトークを磨いたり、広い人脈やパイプ作りをしておく必要性を感じ、まずは一般企業で営業の仕事に就いてみようと思いました。

明るい笑顔でインタビューに答えてくださる溝口さん

将来の開業に向けて準備を進められたわけですね

溝口さん

就職した先は、バスツアー専門の旅行会社でした。次のステップに進むためにも「この会社で営業マンとしてトップを取る」ことを目標に仕事に取り組んだところ、4年ちょっとで達成することができました。会社の総会の表彰式の席で「これで心置きなく辞めることができます」と受賞の挨拶をして上司からひんしゅくを買ってしまいましたが…。

ともあれ、次は現場での経験を積んでおきたかったので、ご縁のあった福岡市の「天婦羅処ひらお」へ修業に向かいました。福岡で7店舗展開するひらおは、松屋のようなカウンタースタイルのリーズナブルな天ぷら専門の店で、本店など一日1000人来店し、自動扉が閉まらないくらい繁盛している人気店として知られています。3か月間、アルバイトさせていただきましたが、見ること聞くこと、全てが勉強になりましたね。

一番おいしい瞬間で お楽しみいただきたいと常に揚げたての天ぷらを提供されています

いよいよ「天咲」開業へ。尾道に出店したのはなぜですか?

溝口さん

松屋やひらおで学んだノウハウを踏まえ、「手始めに天ぷらの店を関東で1店舗出してみよう」と考えたのですが、わたしが目星をつけていたエリアに大手が出店する情報を耳にして結局、断念しました。他にどこか良い出店場所はないか?と探していた時に頭に浮かんだのが尾道です。尾道は天ぷらの材料になる穴子や新鮮な魚介類の産地であり、数々の映画の舞台となった観光都市として全国区に知名度がありますからね。

調べてみると市内に天ぷら専門店も見当たらないし、開業するにはぴったりの場所でした。
早速、向島に居を構えて、いくつかの候補を探した中で家賃は高いけれど、海を見ながら仕事ができることや、尾道駅の近くで女性が気軽に一人でも入りやすい場所であることに魅力を感じて、現在の店舗場所に決めたんです。店名は「尾道で天ぷらを咲かせたい」や「天に向かって事業を咲かせたい」の願いを込めて「天咲」と名付けることにしました。そして、2014年9月12日、「天咲尾道本店」をオープン、わたしが32歳のときのことです

瀬戸内海の新鮮な魚介や旬の野菜を使った揚げたてアツアツの天ぷら

はじめて暮らす街での新規開店に不安はありませんでしたか?

溝口さん

広島もそうですが、尾道はそれに輪をかけて閉鎖的な街なので、どこぞの若造が他所から来て商売を始めたと思われないように地域の方を招いてプレオープンのレセプションを開きました。入居したのが第3セクターの建物だったので、行政や地元企業の方も沢山お見えになられ、新参者としてご挨拶できたのはラッキーでしたね。

営業マン時代の経験を生かして、開店をお知らせする挨拶回りをした甲斐もあって、ありがたいことにオープン早々、大勢のお客様に来店していただきました。開店当初はまだオペレーションがおぼつかないこともあり、迷惑をおかけしたものです。

脱皮したてのワタリガニをそのまま丸ごと天ぷらに! カニの旨味をそのまま感じられます

早いもので開業9年目を迎え、地元の方と観光客でいつも賑わいを見せる店としてすっかり定着しましたが、溝口さんのイチオシメニューは?

溝口さん

海老はもちろんのこと、穴子や旬魚、地元野菜などをバランスよく天ぷらにして、瀬戸内の旨味がいっぱい詰まった「尾道レモン塩天丼」ですね。「お昼に来店されたら、迷わずコレをご注文下さい!」と呼びかけているくらいの自信作です。

あと、脱皮したてのワタリガニを丸ごと天ぷらにしてカニの旨味をそのまま感じられる当店の名物メニュー「丸ごとワタリガニ」もおススメします。もっとも、“お食事”からお酒に合う“夜の献立”まで、全部イチオシなんですが(笑)。

名物「尾道レモン塩天丼 」…天咲オリジナル「尾道レモン岩塩」をかけていただきます

溝口さんの経営理念を教えてください

溝口さん

わたしも毎日、調理場には立ちますが、自分のことは「職人でも何でもない」と思っています。お店作りは、働くスタッフと来店して下さるお客様がいれば成り立つから、社長のわたしなんて、何か困ったことがあれば声をかけていただく“用務員のおじさん”でいいんですよ。従業員が働きやすく、お客様が料理を楽しめる場を提供することが自分に与えられた役割だと考えています。

鮮魚は毎朝漁港から直送されるものを使用しており、その鮮度はお墨付きです

今後の夢やビジョンがあれば、お聞かせください

溝口さん

コロナが流行しはじめた頃、仕事を失った人から「何かできることがないか?」と相談されて始めたのが“キッチンカー”事業です。当時はまだ、尾道や備後地区ではキッチンカーが珍しかったのですが、自動車会社にお願いしてわたしたちが販売する商品の調理機能を装備した車を開発していただきました。現在は、キッチンカー3台を確保し、“ZEST=情熱・レモンの皮、LINK=繋ぐ・絆~情熱を込めてお客様と生産者を繋ぐ!”という意味を込めて「ZESTLINK」という自社ブランドを立ち上げ、広島県全域を中心にイベント・お祭り・行事などの出店依頼を募集しています。

キッチンカーは、イベント会場やショッピングモールに出店しています

キッチンカーですか!今のコロナ禍にあっていますね

溝口さん

ちなみに最初に販売したのはシュークリームの皮でポテサラやローストチキン、スモークサーモンを包んだ「ごちそうシュー」。これも話題を集めましたが、昨年あたりからは、秘伝のたれがしみ込んだ海老天とご飯の旨味が味わえる「天むす」が大好評なんですよ。今後は、このキッチンカー事業にも拍車をかけたいと考えています。

併せて、本業である天咲の多店舗化も実現できれば。尾道に続き、生まれ故郷の広島に系列店を進出するのが目標ですね。

"甘くない"おかずシュー!お肉やお魚をシュー生地でサンド! シューの中にはお惣菜がた〜っぷり♪

これから飲食業界に参入される方に先輩としてアドバイスをお願いします!

溝口さん

料理が好きでやりたい人がほとんどだと思いますが、料理の腕前やこだわりだけに目を向けているとまず失敗します。お客様が何を求めているか?をリサーチし、「どう付加価値をもたせるか?」「いかに売るか?」「いかに売れるか?」などに頭を巡らせるように!

わたしの場合は、肩ひじ張らずにリーズナブルに天ぷらを楽しめる店を経営していますが、そもそも天ぷらやお寿司は、江戸時代に屋台からスタートした庶民の食べ物ですからね。安売りするのが良いというわけではなく、お客様がいつでも気軽に暖簾をくぐれる店でありたいと思います。

キッチンカー限定メニューの「天むす」キッチンカーを見つけたときにはぜひ!

ジャックのひとこと!

ジャック

天咲さんでは、今の時代にあった店舗運営のやり方を積極的に取り入れていらっしゃいます。特にマーケティングを活かした販売戦略や営業活動に長けており、話題作りや仕掛け作りがとてもお上手です。コロナ禍でいち早くデリバリーやキッチンカー事業に乗り出したのも功を奏しました。

また、地元の農家さんや漁師さん、生産者さんとのネットワークを大切に、お店のウリとなるようなオリジナルティー溢れる新しいメニュー作りにも力を入れていらっしゃいます。
常に情報収集のアンテナを立て、アグレッシブに店舗経営をされており、お店の宣伝にしても、チラシを配って回ったりSNSを活用したりと攻めのスタイルで販促しています。

お店を開けて待っているだけでは、お客さまはなかなか来店しません。天咲さんのように、目的に合ったやり方でさまざまな媒体を上手に活用しながら営業活動することが大切ですね!

「おのみち塩レモンぷりん」…天ぷら屋さんが本気で作った、本みりんを使った和食ぷりん

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