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尾道ラーメン 味龍

竹國晃崇 さん

海外一人旅の経験豊富な30歳。
「尾道ラーメン」3代目を襲名!

“素直一筋46年”の謳い文句に自家製ちぢれ麺と天然だしの瀬戸内スープを使用した天然系尾道ラーメンの店として備後エリアで高い人気を誇る尾道市高須町の「味龍」。創業者の祖父、父に続き、3代目として店を運営する爽やかなイケメン、竹國晃崇(たけくにあきたか)さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

家業を継がれるまでの足跡お聞かせください

竹國さん

尾道出身、1992年4月生まれの30歳です。中高一貫校である岡山県の金光学園から同志社大学へ進学しました。大学時代、わたしは海外への一人旅にはまってしまい、卒業を前に周りが商社や銀行を目指してそろそろ就活をはじめる中、自分が企業に入社して働くイメージがどうにもわきません。結局、大学を休学してインドに1ヵ月以上滞在したり、トータルで半年ほど海外を旅していました。

その後、2年遅れで大学を卒業したものの、「海外へ行きたい」という思いは募るばかり。英語も話せることから、ワーキングホリデーを利用してカナダバンクーバーへと渡ることに。現地では、お寿司屋さんなどで働き、当初はビザを取得して移住することも考えたのですが、ふと考えてみると海外の店で働くことはできても、自分には外に出たら通用する武器がないことに気が付きました。ひとまず、何か技術を身につけて出直そうと帰国して、いつでも辞められるように社員の身分にならずに3年くらい色々な飲食店で働いていたところ…。ある日、父が訪ねて来て、「いま店で働いている従業員の年齢がおまえに近いし、そろそろ尾道に戻って家業を手伝ってくれないか?」と伝えられたんです。

父の後を引き継ぎ3代目となられた、バイタリティー溢れる竹國さん

意外な経歴に驚きました。ご本人に迷いはありませんでしたか?

竹國さん

家業のラーメン店、味龍は、造船業に従事していた祖父・竹國國三が1976年(昭和51年)に地元尾道で創業。2代目を継いだ父(※有限会社味龍・竹國文裕社長)がわたしに3代目のバトンを渡しに来たわけですが、様々な飲食店でのアルバイトを続ける中で、ちょうど「どうせなら自分も店を持ちたい」と考えていた時期でした。「3代目を継ぎたい」というよりも、社長である父の隣で経営も勉強できるし、自分の店を持つという夢を叶えるには良い機会かもしれないと思うようになり、家業に就くことを決めました。

お昼時などのピーク時には、ひっきりなしにラーメンの麺を湯がいています

実際に尾道ラーメンの現場に入ってみていかがでしたか?

竹國さん

海外を含め、アルバイトで和食、中華、フレンチなど、様々な料理の厨房を体験して来て、「飲食業は大変だけど、やりがいのある楽しい仕事だ」ということは理解していましたが、アルバイトとして雇われていたそれまでと違うのは家業であること。すなわち、まだ若い自分が人を引っ張っていく立場にならなくてはいけません。

味龍の店舗に携わるようになって感じたのは、他の飲食店に比べてラーメン屋の強みは、調理やオペレーションのマニュアル化ができる点でした。シェフや調理人の技量が重んじられる他の料理店に対し、調理して提供する仕組みさえ、ちゃんと整えば、誰でも即戦力になれるのは大きいですよ。

ラーメン店ならではオペレーションのマニュアル化、仕組みづくりがポイントです

それでは、味龍のこだわりや特長についてお聞かせください

竹國さん

まず、こだわっているのは自家製麺。本店に隣接する自社の製麺所で、寒い時と暑い時で粉の配合から、麺の太さ、硬さを変えるなど、以前は8種類、今でも毎日2種類は違うタイプの麺を作っています。一方、スープについても根本の部分は守りつつ、時流や世相に合わせて常に変化を持たせるようにしています。例えば、景気が良い時はあっさり味に、悪い時はスープの濃度を濃くして、インパクトの強い味に寄せてみたり、といった具合です。

自社の製麺所で天候や温度、湿度に合わせて最適な麺を作っています

なるほど、麺やスープにいろいろやり方があるのですね

竹國さん

実は、わたし本人はもともと尾道ラーメンがあまり好きではないんですよ(笑)。だからこそ“豚の背脂を浮かせた醤油ベースのスープと平打ち麺”で知られる尾道ラーメンの良さが苦手な人でも食べやすいように味を工夫しています。ウチの店のスープは基本的に何かこれが際立つというよりもバランスの良さに重点を置いているのが特長です。自家製の麺には自信があるのでスープと相まって“子供からお年寄りまで広い層に愛される味”をこれからもずっと追及していく所存です。

大きなチャーシューと澄んだ琥珀色のスープ!うっとりするような美しい尾道ラーメン

3代目としての経営理念や今後のビジョンをお聞かせください

竹國さん

自分が大学を出て自由気ままに海外を放浪したり、故郷尾道に帰ってくることができたのも、祖父と父が続けてきたこの店があったからこそ。恩返しする意味も含めて、わたしが考える経営理念は「食を通じて人の役に立ちたい」。単に美味しいものを提供するだけでなく、わたしたちが事業を続けることで地域に貢献できれば幸いです。

現在、尾道市高須の「味龍尾道本店」(席数60席)と福山市箕島の「味龍箕島店」(同50席)の大型店2店を経営し、地域にお住まいの方、ビジネスマンや観光客の方に幅広く来店していただいていますが、今後は他県を含め、他の都市へ出店するのが目標です。店としては既存店のような大型店でなく、少人数で効率よく回せる小型店を作っていきたいですね。

あと、自分は体調を崩しやすいので、わたしが現場にいなくても心配のない新しいオペレーション作りにも力を入れる方針です。店のスタッフの先頭に立って指揮を執れる人材の育成を急がなくてはいけません。

厨房の奥には、スープを炊き上げる大鍋が!こだわりのスープはここでできています

これから飲食業界に参入される方に先輩としてアドバイスをお願いします!

竹國さん

父も家業に就いた当初は嫌々やっていたらしいのですが、わたしも昔から尾道ラーメン自体は苦手だったのに、現場に立って仕事をやり始めてみると、いつの間にかどんどん好きなっていました。何の料理にしろ、飲食業界へ参入される方は単純に就職するというのではなく、料理を作ることが好きだったり、自分の料理で人を喜ばせたいというような確固たる信念がないと、続かないと思います。

また、従業員とのコミュニケーションをしっかりとることも大切ですね。わたしのように“社長の息子”という肩書で店に入っていくと、中には面白くないスタッフもいて不協和音が生じるかもしれません。従業員が楽しく働ける職場環境を進めるためにも気配り、目配りを忘れないようにしてください。

現場とのコミュニケーションを大切にしながらスタッフさんをまとめています

ジャックのひとこと!

ジャック

味龍さんは、尾道ラーメン店の中でも老舗有名店の一つです。味わい深い澄んだスープに小麦の香りをしっかり感じる喉ごしの良い麺、全体的に食べやすく女性にも人気です。
店舗や駐車場も広く座敷やテーブル席もあるので、近隣のサラリーマンや家族連れの方で一日中賑わっています。

味龍さんは、法人化され支店も持ち、46年間も飲食店経営をされています。飲食店を長く運営し、継続的に利益を残すためには、いかに経営者としての考え方ができるかがポイントとなります。料理が美味しいことはもちろんですが、接客サービスや店の雰囲気、日々の数値管理など、プレイヤーとしての役割だけでなく、監督としてのマネジメントが求められます。
老舗ラーメン店を引き継いだ、三代目の晃崇さん、毎日が新しい経験の連続で大変なことも多いかと思いますが…尾道出身の私も応援しています!

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