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ビストロ コションドール

オーナーシェフ
鹿瀬浩史 さん

ミシュラン“ビブグルマン”を獲得
改善続けるフレンチメニューが話題!

ミシュランガイド広島でコストパフォーマンスに優れた良質な店に与えられる“ビブグルマン”に選ばれた中区地蔵通りの「ビストロ コションドール」。ビブグルマンの冠に相応しく気軽に普段使いできるフレンチの開発に取り組むオーナーシェフ鹿瀬浩史さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

飲食の世界に進まれたきっかけをお聞かせください。

鹿瀬さん

安芸高田市出身、1976年生まれの46歳です。実家が安芸高田市向原で40年以上前から喫茶&軽食「ジョイフル」を営んでいたので、幼い頃から飲食業に親しみがあり、いずれは自分が跡を継ごうと思っていたんですよ。ところが、自営業で商売の厳しさを知る両親は息子が同じ道に進むことに大反対で、仕方なく地元の吉田高校卒業後は、豊栄のコンクリートを扱う会社に就職することに。しばらくサラリーマンを続けていたのですが、やはり飲食の道で起業したい思いが強まり、26歳で酔心調理師専門学校へ入学しました。

気さくにインタビューに答えてくださる鹿瀬さん。明るい笑顔が輝いています!

専門学校で基礎を学ばれ、本格的な料理修業の第一歩となったのは?

鹿瀬さん

専門学校卒業後、まずは福岡にあるホテルのイタリアンレストランにアルバイトとしてお世話になりました。プロの調理の現場で実戦に臨むのは初めてでしたから、なんと厳しかったこと…。新人とはいえ自分は20代後半です。料理に対する情熱など、しっかりした気構えが必要なのに、スタートからして「最後は実家を継げばよいだろう」くらいの甘えた考えだったので、高校を出たての17,18歳の新卒にも比べられ、「何を考えて仕事やってるの」と毎日叱られてばかり。“料理人あるある”ですが、人格を否定されることもしばしばで、
精神的に参ってしまいました。悩みながらも福岡で2年ほど働いた頃、広島市内で「バー」を営む先輩から声をかけていただいたのを機に地元へUターンし、バーのお手伝いと並行して現在の店の場所で営業されていた某フレンチレストランのアルバイトをスタートしたんです。

お店にいるほとんどの時間を厨房での仕込みで過ごす

地元・広島に帰って経験を積まれたわけですね。開業までの足跡は?

鹿瀬さん

バーとフレンチで働きながら28歳になると、交際していた彼女との結婚を考えるようになりました。安定した収入を得るためにはひとまず、就職しようと選んだ先が全国展開する市内の結婚式場のレストラン部門です。

当時は少人数のスタッフで厨房を切り盛りしていたので、目が回るほど忙しく、土日の結婚式が入る時などは睡眠時間がほとんどないくらいでした。約9年勤務したうち、2年間は東京麻布と青山の系列の式場に出向。一流のスタッフが揃う現場で腕を磨くことができましたが、あまりの辛さに何度逃げ出そうと思ったことか。その度に「もし辞めたら、今の仕事以外に何かできることがあるのか?」を自問自答して踏み留まったものです。30~40代の間のことはあまり記憶がないくらい働きずめでしたが、厳しい環境で身に付けた技術や経験が自分のバックボーンであり、引き出しになっていることは言うまでもありません。

結婚式場へ勤めたのち、同じ職場の元上司が幟町に開いたフレンチに入社して働いていたところ、かつてアルバイトしていたフレンチレストランのオーナーシェフがフランスへ勉強に行くことになったので「店の跡を居抜きでやってみないか?」との誘いを受けたんです。わたしも40歳になっており、願ってもないこのチャンスを逃す手はないと、長年念願としてきた独立開業に踏み切ることを決意しました。

長い修行で培われた調理技術…センス溢れるフレンチの数々

満を持しての開業ですが、オープン時に苦労されたことは?

鹿瀬さん

2017年7月、フランス語で幸福のシンボルとされる“金の豚”の意味を持つ店名のフレンチレストラン「ビストロ コションドール」をオープンする運びとなりましたが、開業にあたって弱ったことがひとつ。皿や食器をどこで買えばよいのか?肉、野菜、オマール海老などの魚介類といった食材はどこで仕入れるのがよいのか?全然わからないんですよ。街場の店での勤務歴が長ければ違うのでしょうが、わたしは、備品から食材まで全て用意されていた結婚式場出身なので、自分で選んだことも仕入れたこともありません。知りあいに聞いたり、価格帯が違うものを調べて比較したり、毎日必死で勉強しました。

仔牛の骨や肉を香味野菜と一緒に煮込んだフォンドボー…ゆっくりと手間暇をかけて作り上げる

なるほど、それは大変でしたね。

鹿瀬さん

最初は、夜だけの営業で女子層をメーンターゲットに客単価3000円くらいのリーズナブルな設定で手間をかけたアラカルトメニューを提供することに。わたしとアルバイトで回そうと思ったので、自分が慣れるためにも宣伝は控えるようにしていましたが、フレンチレストランの跡地を引き継いだこともあり、客足もそれなりに順調でした。集客アップを図ろうと、翌年2月からランチ営業を開始し、その目玉になるよう考案したのが“フレンチ風のサンドウィッチ” です。フレンチの惣菜をはさんで1000円以内で提供したところ、これが大ヒット。テレビで紹介されたり、広島三越の催事にも出店したことが呼び水となって、ミシュランガイド広島の価格以上の満足感が得られる店“ビブグルマン”に選定されたんです。

ミシュランガイドのビブグルマンに選定されたお店としても有名!

鹿瀬さんの経営理念は?

鹿瀬さん

「人を幸福にすること」ですね。来店されたお客様に接客、料理、雰囲気、全ての面で満足していただき、「その人の時間を大切にする」ことをいつも心掛けています。

美しい仔羊のロースト。肉の旨味を閉じ込めた絶妙な火の入れ方!

一方、お店の運営や料理の方は?

ミシュランの肩書が出来たことによって客足も増えたのですが、それに併せて客層も多様化し、料理に合うお酒を飲まずに水だけを注文される方などが見られるようになりました。経営効率面を考慮して翌年からはメニューを改善し、従来のアラカルトからコース主体に切り替えました。経営を安定させるためにも常に改善は続けており、現在はランチで人気を集めたサンドウィッチを休止して違うメニューに変更したり、コロナ禍ではステーキライスのテイクアウトを試みるなど、料理やサービスの活性化に取り組んでいます。

ウサギを使ったパイ包み。ジビエ料理をいただけるのもお店の魅力の一つ!

イチオシメニューも教えてください。

鹿瀬さん

イチオシ料理は、広島では当店だけでしか扱っていない山形県の千日和牛を使ったメニューかな。通常、食牛は2年半ほどの肥育期間で出荷されますが、千日和牛は1000日を越える肥育期間で大事に育てられて食肉となるため、サシが細かく旨味が凝縮した“山形の幻の和牛”です。是非味わっていただきたいですね。あと、故郷、安芸高田市産のイノシシなどジビエ料理もお試しいただければ!ジビエについては知識を深めたいことも多く、猟師さんにも誘われているので、これから狩猟の勉強もしたいと考えています。

テイクアウトメニューで好評な「牛箱」。サシが細かく旨味が凝縮した山形県の千日和牛を使用

これから飲食店を開業される方に先輩としてアドバイスがあれば。

鹿瀬さん

まずは世の中の状況をよく把握すること。何ごとも“火がついたら冷める”のが世間のならわしです。お店を経営する上で、何を大事にして、何を捨てるかを見極めなければなりません。売上は良くても決しておごることなく、怠慢にならないようにしてください。

自分のことを振り返ってみると、食材はもとより、皿一枚を揃えることに難儀したので、困りごとを相談できる人とのつながりを持っておくことも重要ですね。飲食店経営という自分のやりたい道に進むのは、言うなればギャンブルみたいなもの。わたしは、妻と子供2人の家族がいるから「死ぬ気でやらねば!」の気持ちで頑張っております。

ご丁寧にお見送りをしてくださいました!どうもありがとうございました

ジャックのひとこと!

ジャック

カジュアルにフランス料理やワインを楽しめるビストロスタイルで、特別な日はもちろん普段使いとしても使いやすいお店です。
ビストロと言っても、前菜からメイン、デザートまでしっかりご満足できる本格フレンチで、コストパフォーマンスの高さに驚かされます。斬新で独創的なお料理やワイルドなジビエ料理が登場することもあります。
ビストロだけにリーズナブルな価格でいかに顧客満足度を上げるかと言う難題に、高級食材に頼らない経験豊かな調理技術を活かし、仕込みに手間と時間をかけ丁寧な仕事で料理に付加価値を加えています。
飲食店は、付加価値提供業と言われており、その付加価値を追求していくことが重要となります。
鹿瀬さんの料理に対する熱意や情熱、その姿勢は他の飲食店さんの模範にもなりますね!

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