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廣島おばん菜 やまと家

店主
三浦幸美 さん

OLから転身しておばんざい店を開業。
家庭で馴染みのある料理をひと工夫!

江田島の新鮮で旬な食材を使った体に優しい野菜料理やおでんなど、家庭料理が評判の並木通りの「廣島おばん菜 やまと家」。飲食業とは全く無縁のカタい会社でのOL生活を経て転身、女手一つでお店を切り盛りする店主・三浦幸美さんの飲食業への想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

飲食の世界に進まれたきっかけをお聞かせください。

三浦さん

江田島市出身、年齢はおいおいわかるはずです(笑)。まず、高校卒業後は広島市内の問屋さんに事務員として就職したのち、鉄鋼関係の会社に転職しました。その会社には、営業事務で入社したので、30代からは企業へのセールスに飛び回る毎日でした。当時は、まだ飲食業に特に憧れはなかったのですが、仕事帰りに同僚や友人といろんなお店によく足を運んでいましたね。

好んで通っていたのが横川の居酒屋さんで、料理はもちろんのこと、店のお母さんと話をするのが楽しみでした。このお母さんは、何しろ面白くて、人と人を結びつけるのがとっても上手。わたし自身、営業職で人とコミュニケーションをとるのが好きだったし、お母さんのような飲食や接客の仕事に興味が湧いてきたんです。第2の人生が頭にちらつき始めたこともあって、45歳で長く務めた会社を辞め、ひとまず料理の基礎を学ぼうと酔心調理師専門学校へ入学しました。

ホッとする笑顔がとっても素敵!毎日お客さんは癒やされます!

全くの素人から始められたわけですが、開業までの道のりは?

三浦さん

専門学校は1年コースでしたが、和・洋・中の調理法を教わるよりも、それまで何も知らなかった食品衛生法などの飲食事業者が身に付けておくべき知識を学んだのが、すごく勉強になった気がします。専門学校卒業後は、我が年齢を考えると、どこかに就職するというのも何なので、「自分で何かの店をやってみよう」と決心しました。まずは、その前にプロの現場を知っておく必要性を感じ、流川の割烹料理屋さんでアルバイトをさせてもらうことに。このお店では、長年の経験を持つ板前さんの料理の素晴らしさに感動しました。料理の盛り付けから調理する際の所作にいたるまで、すべてのお仕事が美しいんです。

実は、飲食での起業を決めた頃、「素人考えで広島ならお好み焼き屋さんかも?」と考えて、食べ歩きしたこともあったのですが、アルバイト先の板前さんの美しい仕事や、専門学校で学んだ数々の料理のことが頭に浮かぶと、いろいろな料理が作ってみたくなりました。とはいえ、自分の実力を判断すると専門的な料理はまず無理です。「家庭料理の延長ならばなんとかなるのでは…」との思いで決めたのが“おばんざいの店”でした。

種類豊富な色とりどりのおばんざいの数々がテーブルに並ぶ

オープンに向けての準備は順調でしたか?

三浦さん

開業に向けての準備は何から何まで初めて尽くしで、当初の想いと変更することも多々ありました。例えば、店の場所について。“カウンターがあって10人程度のこじんまりしたおばんざい屋さん”をイメージして、最初は広島駅界隈への出店を考えていたのですが、何人かに相談してみたところ、なかなか手ごろな物件がありません。素人が始める店でもあり、海千山千の店舗がひしめく流川では荷が重いし、当面はわたしひとりで切り盛りするので深夜までの営業は難しい。これらの要素を踏まえて流川に近すぎず、企業のオフィスが集積してメーンターゲットのビジネスマンの客足が見込めそうな現在の場所を選びました。

場所が決まったのちも、あれやこれや苦労しましたが、何とか2017年2月に店をオープン。店名は実家の屋号である“大和屋”が由来で、おばんざい屋らしく優しさや温かみを感じられよう平仮名にしてみました。そういえば、新規オープンする時は、どのお店も積極的にPRされますよね。私の場合は、情けない話…遠慮する事に。派手に宣伝して、一度に沢山のお客さんが来られても自分のキャパシティーで対応できるか不安でしたから。

開放的な座敷。窓が大きく風や日差しが入るのも気持ちいい!

おばんざい店の開業にあたり、ご家族や周りの反応はいかがでしたか?

三浦さん

江田島の両親は何のお店を開くにしろ、わたしが起業して独立することを応援してくれたんですよ。というのも、実家は船の関係の自営業だったので、OL時代は自営業と会社勤めで考え方も違うせいか、親とはあまり会話が弾みませんでした。開業したのを機に、むしろコミュニケーションが良くなったくらいです。母が江田島の畑で作った野菜をいっぱい抱えて仕込みや掃除を手伝いに通って来てくれ、大助かりでした。

家族のほかに友人や知人も後押ししてくれ、ありがたかったのですが、心細かったのは自分には飲食業の仲間がいなかったこと。新参者でわからないことも多いし、サラリーマン時代のように愚痴を聞いて欲しいのだけれど、業界の知り合いはアルバイト先くらいでした。同業者の先輩として苦労や悩みを共有できる人に周りにいて欲しかったですね。

グループでも楽しめるようメニューは相談に乗っていただけます!

初めて尽くしのオープンから早いもので5年目を迎えました。お店のこだわりや料理についてお聞かせください。

三浦さん

こだわりというほどではありませんが、料理人としてのキャリアが少ない分、お出汁は必ず自分でとるなど、ひとつひとつの料理にかける手間を惜しまないようにしています。食材に使う実家の両親が作る江田島産の新鮮な野菜もセールスポイントですね。

お店のメニューの中で人気のあるイチオシは、丼にもできる“麻婆豆腐”。四川料理の激辛本格派と家庭の味の中間を目指した誰にも喜ばれる味に仕上げています。常連のビジネスマンの方には、おでん、カレーライス、ポテトサラダなどがリピートの定番かな。どれも家庭で馴染みのある料理ながら、ひと味違う工夫をするよう心掛けています。

冬の人気メニュー「おでん」。出汁が何ともまあ!優しいお味

三浦さんのこれからのビジョンや夢をお聞かせください。

三浦さん

OL時代は、会社が何から何までお膳立てしてくれた上で仕事するのが当たり前でしたが、今はそのお膳だてがありません。店主であるわたしが1から10までひとりで全てをこなさなければ、店が立ち行かなくなってしまいます。続ければ、続けるほど、とにかく大変で、本当にむつかしい。しかし、“継続は力なり”の言葉どおり、続けていくことが一番重要です。これからの夢は「この店を継続させること」しかありませんね。そのためにも店を支えてくださる皆さまを大切に思い感謝し、そのご縁が積み重なって行く事を楽しみたいです。

やまと家さんの幻のカレー!いろんな野菜を沢山入れて煮込むのがポイントらしい。メニューにあるときにはぜひ!

これから飲食店を開業される方に先輩としてアドバイスがあれば。

三浦さん

まず、飲食業とは別の世界から素人で開業したわたしが1年目に経験した苦い思い出からお伝えすると…オープン当初はお客さんひとりひとりの好みや個性が違うので、頭がパニックになります。客足が途切れると、店のことについて色々アドバイスして下さる方がいるのですが、それに対応するのがしんどい。経営者としての信念があり、確固たるスタイルを持っていれば良いのですが、自分にはなかったので困りましたね。

あと、開業時に立てた様々な事業計画は間違いなくブレるので、悩んだ時に相談できる人やコンサルタントの方を見つけておくと良いと思います。わたしの場合はオペレーションがうまくいってなかった時に、調理に精通するコンサルさんを紹介されて助かりました。力になってくれる良いブレーンを作って、ひとりで抱え込まないようにしてください!

満面の笑みで見送ってくださいました!ごちそうでした

ジャックのひとこと!

ジャック

地元、江田島をはじめ地産地消の食材などを用い、安心・安全で体に優しい手間をかけたおばんざいの良さはもちろんですが、お店の雰囲気が明るいこと、常に清潔感があることもお店の魅力の一つです。
何より、店主、三浦さんの優しいお人柄や女性ならではの気遣いやおもてなしに癒やされます!
飲食店において接客は、ある意味、料理以上に大切な要素となり、常連さんが足げく通う理由にもなります。飲食店には、選ばれる理由、来店していただく理由、通っていただく理由が必要だからです。
起業した頃は、いろいろなことに苦労して悩んだ時期もあったとのことですが、今ではすっかりお客さんに愛されるお店ですね!

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