島根県太田市出身、1983年生まれの39歳です。高校卒業後、広島市内のビジネス専門学校でホテルマンやバーテンダーになるための勉強をしていたのですが、20歳の頃から飲食店のアルバイトをするようになりました。結局、専門学校卒業後もそのまま居酒屋チェーンの「八剣伝」などで修行を続け、調理や接客の流れをひと通り覚えてくると、この仕事が楽しく、やりがいを感じるようになってきたんです。30歳を迎える頃には、独立して自分で開業したいという気持ちが芽生えてきました。

まずは、「何のお店を開く事にするか？」を考えることからスタート。最初は「自分の故郷である島根県の特産を使った料理店を開きたい」と思い、と周りに相談してみると「果たして広島で需要があるか？」との意見が多く、発想を切り替えることに。次に頭に浮かべたのが、長い間務めた八剣伝で慣れ親しんだ串焼き料理の店でした。仲の良い飲食コンサルタントの人に意向を伝えたところ、「串焼き料理ならば、福岡の屋台で“野菜肉巻き”が人気を集めているので、広島では初めての専門店をやってみては」とアドバイスされたんです。自分でも情報を集めてみると、「なるほど、これはいけそうだ」との感触がありました。

はい、コンサルさんに恵まれました（笑）。店の看板メニューが決まり、店舗探しをする際に希望した条件は、小さいスペースでよいので、街中で家賃も安い物件であること。不動産屋さんを巡ってみると、スペイン料理店跡が居抜きで使える現在の店舗が見つかりました。ちょうど店の目の前の広島テレビ放送の本社がエキキタエリアに移転したばかりで不安も少しありましたが、ビジネス街の真ん中で飲食テナントが集積する好立地だったのでここに決めたんです。早速、開業準備を進め、2018年10月、オープンにこぎつけました。

店名は、妻から「わたしが好きな漫画の主人公が常連の店と同じ名前にしてほしい」との要望があり、「逢楽（あらく）」に決めました。自分はその漫画を知らなかったのですが、最近になって広島出身の漫画家、新久千映さんの代表作でドラマ化もされた「ワカコ酒」の主人公、村崎ワカコが行きつけの架空の居酒屋だと人に教えられました。珍しい読み方ではありますが、新久さんが広島出身という縁も感じられ、結果的には良かった気がします。

店内の座席数はカウンター6席とボックス席17席。オープン時のスタッフは私とアルバイト２人です。広島では、目新しい野菜肉巻き串としてインスタで火がついたり、テレビだけでもテレビ新広島の「満点ママ」など4件に取材していただき、おかげさまで好調なスタートを切ることが出来ました。一番の想定外はもちろん新型コロナウィルスですよ。感染拡大に伴う自粛要請など、オープンして1年余りで波に乗り始めていた客足に急ブレーキがかかる事態に見舞われるとは思いもよりませんでした。

ウチの店のメーンターゲットは女性です。年齢層も幅広いので女子会などの利用に向けて、夜のコースも3000円台を主体にリーズナブルで野菜をふんだんに使ったヘルシー志向の料理を揃えています。イチオシはやはり数あるメニューの中でも一番人気の「レタス巻き」。豚バラ肉でレタスを巻いた１本220円の串ですが、シャキシャキ感と口いっぱいに広がる肉の旨味が好評で、お客さんから「家でも作ってみたいのでレシピを教えて」と言われることも少なくありません。

こだわりを強いてあげれば、料理に使用する食材ですね。特に肉については、脂の少ないヘルシーなモノを使うため、業者さんにスライスする厚さをミリ単位で指定しています。野菜も旬のものを使うように心がけていますが、最近は値段が高いのが頭痛のタネです。

「従業員を守りたい」、この一言に尽きます。自分も経営者になって痛感しましたが、アルバイトで雇われていた頃と違い、お金の面でも、シフトなどの管理の面でも従業員に対して責任を持たねばなりません。店が繁盛すると、自ずと雇用する人数も増えますが、店舗経営をうまく行うためには、何はさておき従業員を大切にすべきだと考えています。

ちなみに「飲食業の求人募集は難しい」と言われて久しい中、幸いにもウチの店は求人募集したことがないんですよ。知り合いの妹さんとか、誰かの紹介で入ってくれているので働き始めると長いというか、開業以来、7人ほど雇ったアルバイトのうち、大学を卒業して就職した子以外、辞めた人がいません。みんな、よく働いてくれる気だての良い子ばかりです。スタッフがきちんとやってくれているので、店内の衛生面も安心ですし、お客さんとトラブルがあったことは一度もありませんね。

10月からウーバーイーツでのサービスを開始する予定です。野菜肉巻き串はもちろん、洋食畑で豊富な経験をもつ64歳の料理長が腕によりをかけたハンバーグなどの料理をデリバリーでも楽しんでいただこうと思っています。

まだまだ実現するのは先のことになりそうですが、将来的には多店舗も視野に入れたいですね。広島県産の食材の美味しさを多くの人に伝えて行ければ本望です。

色々ありますが、まず客席数の多い大箱の店はやめた方がよいでしょう。席を埋めるのが大変ですから。まだまだコロナの終わりも見えないし、無謀な挑戦はしないように！

あとは、開業前に自分でよく勉強すること。飲食店の経営について、最初はわからないことや注意すべき点も多々あるので、開業セミナーとか勉強会に参加するのをお勧めします。加えて、独りよがりにならず、周りの人の声に耳を傾けるのも大切です。わたしも、どこかのコンサルの人⁉にアドバイスをもらったのが大いに役立ちましたから…。

まず、驚くのは野菜肉巻きの種類の多さです。季節の野菜やオリジナルの創作メニューなど、ワクワクする美味しそうな野菜肉巻きが並びます。
トレンドや話題性に加え、オーナーさんや料理長の斬新な発想力で、お客さまが飽きない工夫をされています。
広島でもちらほらと似たようなお店が出店していますが。逢楽さんは草分け的な存在になっていますね！
ヘルシーな居酒屋スタイルで、女性客にウケが良いのも逢楽さんの魅力の一つです。野菜肉巻きだけでなく、洋食・ハンバーグや揚げ野菜肉巻きなど、新メニューも続々登場するとのこと、今からとても楽しみです！