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福々庵

代表取締役
森本真由美 さん

3人の子供抱えたシングルマザーが
起業した福を届けるまんじゅう屋!

看板商品である甘さ控え目のこしあんを包んだ二口サイズの手焼きまんじゅう「福まんじゅう」や溶けにくい新食感アイス「シャリもち葛バー」で知られる中区南吉島の株式会社福々庵。いつも笑顔で前向きに、数々の試練を乗り越えてきた女性社長・森本真由美さんの和菓子製造にかける想いとは?…ジャックが聞かせていただきます。

福々庵を創業されるまでの足跡お聞かせください

森本さん

広島生まれ広島育ちです。高校卒業後、コンビニの「ローソン」に就職、職場結婚して23歳で長男、25歳で長女を授かりました。27歳の時に主人がローソンのFCとして独立したことから、私も手伝うことに。その後、ローソンの契約終了を機に、商品力が強いセブンイレブンのFC店に鞍替えして売上を伸ばしていたのですが、“好事魔多し”とは、よく言ったもので忙しすぎて夫婦のすれ違いが増えていきました。おまけにわたしは38歳の時に次女を出産したため、子育てと自営業で精神的に余裕がありません。いくら商売が繁盛していても子供たちのことを考えると、このままの状態で進むべきではないと判断し、夫とは協議離婚することになりました。

気さくにインタビューに答えてくださる森本さん…とても魅力的な経営者です

ご苦労があったのですね

森本さん

42歳にして3人の子どもを抱えたシングルマザーとなり、再出発するためのリサーチを開始したところ…。アンテナに引っ掛かったのが、当時のたい焼きブームを反映して小判型の生地にこしあんを入れて焼いた「千両まんじゅう」というお菓子メーカーがFC加盟店を募集している情報です。「広島では、あまり見かけない商品だし、チャンスかも?」と考え、貯金をはたいてFC契約を結び、2009年3月9日、西区己斐本町のJR西広島駅裏にあった2階建て7坪の物件を借りて「福々庵 千両まんじゅう西広島店」をオープンしました。

福を呼び込むと人気のまんじゅう…厳選素材と手焼きにこだわっています

現在の福々庵の前身ですね。さて、その後のいきさつは

森本さん

まずは、口コミでお客さんを集めようと、駅周辺でチラシを配ったり、近くの商店街やお花見会場へ焼き立てのまんじゅうを行商してみたり、あれこれいろいろやってみたものです。次第に近所の子供たちが店に来てくれるようになり、放課後になると小学生だけでなく、中学生や高校生も加わりました。

念願だった子供がお小遣いで買えるリーズナブルな価格を設定し、地域の子供たちが足を運びやすく、憩いの場となる「寺子屋のような店を作りたかった」という夢が叶ったわけです。そのうち、だんだん独自の商品展開もやってみたい気持ちが高まったことから、1年後には千両まんじゅうとのFC契約を解消し、「福々庵」単独の屋号で50円の福まんじゅうの他に、350円の定食なども提供する飲食店へ業態変更しました。

心を込めた手作りのやさしい味で手土産にも好評です

なるほど、いよいよ福々庵の誕生ですね

森本さん

商品の単価が低いだけに経営的には厳しい状況が続いていましたが、寝る間も惜しんで無我夢中で駆け回ってきたこともあり、3年目を迎える頃には、「福」という縁起の良さが買われて、学校の卒業式やバザー、結婚式の引き出物、会社関係のイベントなどの大口注文が入り始めたんです。一度に500個~800個の注文もあるので、従来の1台しかない焼き台では生産が追いつきません。製造部門の強化を図ると同時に、かねてからの目標だった菓子製造業の許可を取得することを決め、タイミング良く出資を受けられる話も出たので、中区光南に約3坪の工場を併設する2号店「福々庵吉島店」を開設する運びとなりました。

オーダーメイドでオリジナルの焼印まんじゅうも作れるそうです

製造機能も強化されたわけですが、何か苦労されたことはありますか

森本さん

法人化と2号店開設をきっかけにスーパーへの卸売りを積極化したところ、卸先も順調に増えたため、作業効率を高めようと、ひとまず西広島店を閉店。新商品の開発やネット通販にも拍車をかけていた矢先、工場と店舗を備えたベース基地、吉島店の不動産物件に問題があることが判明しました。移転を余儀なくされたものの、ここで歩みを止めるわけにはいかないと、すぐさま物件を探し、白羽の矢を立てたのが中区南吉島のボートパーク1階です。急展開で準備は大変でしたが、2018年3月、今後、必要とされる国際的な衛生基準“HACCP(ハサップ)”仕様の工場を併設した現在の本店が完成しました。

ボートパークにある吉島店の工場の様子…丁寧に手作業でおまんじゅうを焼いています

海に面して眺めも良い場所だし、製造設備も整った素敵な拠点ですね。数ある福々庵の人気商品についてもお聞かせください。

森本さん

小売よりも卸売の比重が高まった2014年頃からオリジナルの焼き印を製作し、まんじゅうに焼き印を付けるサービスを開始すると、会社のロゴマーク、経営者直筆の文字、学校の校章など、お客様の用途に合わせた焼き印を押したまんじゅうが呼び物になりました。中でも広島東洋カープのマスコットキャラクター“カープ坊や”の焼き印を押した球団公認「カープ福まんじゅう」は、全国のカープファンから愛されるヒット商品になっています。

カープ坊やがかわいい!カープの応援をおまんじゅうで盛り上げます!

「カープ福まんじゅう」とても人気がありますね。他にもヒット商品がありますか

森本さん

2019年7月の西日本豪雨災害により県内の販路が激減した時に、売上回復の期待を込めて開発したのが葛粉を使用し“半解凍”で食べる新食感アイス「シャリもち葛バー」です。配達で立ち寄った介護施設で、ひとりのおばあちゃんが「暑い時は冷たいものが食べたいけれど、歯が悪くて固いアイスは食べられない」と嘆いていたのをヒントに工夫してみました。地元名産の果物など20種類の味を用意したところ、2020年には20,000本の販売を達成し、待望の商標登録も取得しました。今では福まんじゅうと並ぶ福々庵の看板商品です。

葛粉を使用し「半解凍」で食べる新食感のとけない不思議なアイスです!

精力的な活動を続けておられる森本さんの信条を教えてください

森本さん

昔から自分の信条としているのは「時代の変化を追いかけること」。スーパーの実演販売を筆頭に、わたしはいつも現場に入っているので、お客様のニーズを直接肌で感じています。世間の生の声やご要望を自ら聞いて、それを商いに反映できれば、みんなが笑顔になれると思うんです。コロナの収束には、もう少し時間がかかりそうですが、時代の変化に即応しながら常に前を見据えて進んでいきたいですね。

店舗名や商品名は、商標登録されおりブランド向上に努めていらっしゃいます

これから食の世界に参入される方に先輩としてアドバイスをお願いします

森本さん

飲食店をされる方は、飲食店営業許可だけでなく、食品製造業許可を取得しておくべきですね。食品衛生法が定めた施設基準に合わせた建物や設備を有する必要があるため、費用はかかりますが、惣菜などテイクアウトの商品を扱えますし、卸業もできたり、事業展開の幅が広がりますからね。最初から抱き合わせで申請しておくと、あとあと便利ですよ。

わたし自身、今日に至るまでの道のりを改めて振り返ってみると、一難去ってまた一難、大変なことの連続でした。ただ、全ての経験がこれからの糧となるので後悔はありません。食の分野に限らず、“魂のこもったものづくり” に努め、世の中に「福」を届ける仲間が増えて欲しいと思います。一緒に頑張りましょう!

しっかりした経営ビジョンをお持ちの森本社長…人のご縁をとても大切にされています

ジャックのひとこと!

ジャック

経営者として大切なことは、「明確なビジョンや経営理念を持つこと」とよく言われます。森本社長は、ぶれることのない明確なビジョンを持ち、それを実現するためにはどうすれば良いのか、何が必要なのか方向性を決め、スタッフさんに理解しやすい形で示されています。
森本社長の高いレベルのコミュニケーション能力を活かし、社内はもちろん、取引先や同業他社などの関係をうまく保ちながら、自社の発展につなげていらっしゃいます。
さらに、会社を維持し、さらに発展させていくためには時代を先読みする鋭い洞察力が必要になりますが、常に視野を広く持って、さまざまな新しい試みにも挑戦されています。
森本社長の経営手腕から学ぶところは本当に多く、謙虚な姿にもとても共感できます!

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